2002 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイドβ蛋白前駆体の膜内γ切断はエネルギー依存的か
Project/Area Number |
14770499
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大河内 正康 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90335357)
|
Keywords | アルツハイマー病 / プレセニリン / γセクレターゼ / ATP依存的蛋白分解 / アミロイドβ蛋白 / βアミロイド蛋白前駆体 / CTF_γ / γ切断 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ蛋白(Aβ)はアミロイドβ蛋白前駆体(APP)から二段階の蛋白分解反応により切り出される。Aβにはアミノ末端が一致してカルボキシル末端が2アミノ酸残基異なるAβ40とAβ42の主に2種類の分子種が存在する。今回の研究は"γ切断が行われるためには、基質であるAPP CTFあるいはNotchΔEの膜通過部分にあるγ切断部位を一時的に親水条件にすることが必須なのではないか?もしそうならば、そのためにATPなどのエネルギーを使っているのではないか?"検討した。γセクレターゼによるγ切断を含む蛋白分解酵素によるペプチド結合の分解は、加水分解であるから、一般的に親水性条件下で起こる酵素を触媒とした反応であり、エネルギーは必要としない。その一方で、こうした一般的な蛋白分解酵素は膜内の疎水性条件下のペプチド結合を切断することができない。しかし、大腸菌の蛋白であるFtsHなど一部の蛋白分解酵素はATPaseドメインとproteaseの活性中心を合わせ持ち、標的膜蛋白全体を(膜貫通領域を含んで)分解する能力を持つことが近年明らかになってきた。このような事実を考慮し、γ切断が同定されたときからの研究者の間で共通した疑問である、γ切断はどうして膜通過領域のほぼ中心というきわめて疎水性の高い部分で起こるのか、水分子はどのようにして膜内に供給されるのかという問題を解決する仮説をたてた。最近、γセクレターゼによるγ切断が試験管内で可能になった。しかし、不思議なことにその効率は細胞内での切断に比較して非常に低い。本年度はこの系をγセクレターゼが関与する切断であるAPPCTFとNotchΔEの両方について再現し最適条件を決定した。その上で、この試験管内反応溶液に高エネルギー3燐酸結合を含んだエネルギー源を添加することで効率の飛躍的な向上が認められないか検討した。その結果、γ切断によるAPP-CTF_γの生成にはATPは使われていないことが明らかになった。来年度は、酵素と基質の間の直接的な関係をより明らかにするために基質を試験管内で合成し、その人工基質がγ切断を受けるかどうか検討する。この場合についてもエネルギー依存性について検討を加える予定である。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Okochi.M., Steiner, H., et al.: "Presenilins mediate a dual intramembranous gamma-secretase cleavage of Notch-1"EMBO J. 21. 5408-5416 (2002)
-
[Publications] Lammich, S., Okochi.M., et al.: "Presenilin dependent intramembrane proteolysis of CD44 leads to the liberation of its intracellular domain and the secretion of an Aβ-like peptide"J Biol Chem.. 277. 44754-44759 (2002)
-
[Publications] Fluhrer, R., Multhaup, G., Schlicksupp, A., Okochi.M., et al.: "Identification of a beta-secretase activity, which truncates amyloid beta-peptide after its presenilin dependent generation"J Biol Chem. 278. 5531-5538 (2003)
-
[Publications] Yasuda, Y., Kudo, T., Katayama, T., Imaizumi, K., Yatera, M., Okochi.M., et al.: "FAD-linked presenilin-1 mutants impede translation regulation under ER stress"Biochem Biophys Res Commun.. 296. 313 (2002)
-
[Publications] Kudo, T., Katayama, T., Imaizumi, K., Yasuda, Y., Yatera, M., Okochi.M., et al.: "The Unfolded Protein Response Is Involved in the Pathology of Alzheimer's Disease"Ann N Y Acad Sci.. 977. 349-355 (2002)
-
[Publications] 大河内正康, 武田雅俊: "アルツハイマー病の生物学的診断および根治療法への挑戦"日本医事新報. 4086. 1-5 (2002)
-
[Publications] 大河内正, 武田雅俊: "アミロイド前駆体蛋白遺伝子の点突然変異の家族性アルツハイマー病からの分離"精神医学文献事典 弘文堂. 3 (2002)