2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患モデル動物における環境因子の影響及び薬物の予防効果の検討
Project/Area Number |
14770501
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石原 武士 岡山大学, 医学部附属病院, 助手 (60335594)
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Keywords | タウ蛋白 / 神経変性疾患 / タウオパシー / 動物モデル / リチウム |
Research Abstract |
平成14年度は、実験計画通り、遺伝子操作マウス(PrP T44)に対するリチウムの投与実験を行なった。しかし、予備実験の段階で、マウスの病理変化が薬物を投与していない群において減弱していることがわかり、原因の究明が必要であった。当マウスは米国から輸入したものであるが、検討の結果、米国で使用されていた飼料と我々が用意した飼料との成分の違いが原因の一つであることがわかった。その後、米国から飼料を輸入し、全ての実験を再び組み直した。尚、リチウム投与実験の進行を遅らせることになったものの、飼料の成分の差がマウスの病理に影響を及ぼすという事実は大変興味深く、新たな実験へと発展させる予定である。 リチウムを生後2ヶ月から6ヶ月まで投与する群(前期投与群)は既に屠殺し、免疫組織学的、生化学的実験を進めているところである。生後6ヶ月から9ヶ月まで投与する群(後期投与群)は、平成15年6月頃屠殺予定である。前期投与群は主としてリチウムの予防効果を、後期投与群は治療効果を検討するものである。 前期投与群の実験からこれまでに得られた結果からは、リチウム投与は、行動学的には病態を予防する効果は否定的であり、また免疫組織学的には、少なくとも前期投与群においては、リチウムは予防的効果を持たないだけでなく、むしろ病理変化を促進させる可能性が示唆されている。これらの結果は、培養細胞などを用いたこれまでの研究報告とは合致せず、遺伝子操作マウスに対するリチウムの急性投与実験の報告にも相反しており、興味深いものである。当実験は、遺伝子操作マウスにリチウムを5ヶ月に渡って投与するという、将来の臨床応用を考慮した実験デザインを採用しており、今後の後期投与群の実験結果と合わせて、タウ蛋白が関与する神経変性疾患へのリチウム投与の是非について、示唆的な報告となることが期待できる。
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