2003 Fiscal Year Annual Research Report
レチノイン酸による成人T細胞白血病細胞の増殖抑制効果
Project/Area Number |
14770543
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
宮武 淳一 近畿大学, 医学部, 助手 (30298963)
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Keywords | 成人T細胞白血病(ATL) / ATRA / HTLV-I / NFκB / ADF |
Research Abstract |
HTLV-1陽性T細胞株にATRA (all-trans ratinoic acids)を添加することにより細胞増殖抑制効果が認められたためその作用機序を検討した。 (方法)(1)ADF(ATL darivad factor)の発現の差、およびATRAによるTRX-Rの阻害によるGSH系の還元環境修復能力の差でレチノイン酸に対する感受性の差異が生じる可能性が示唆されるため、HTLV-1(+)T細胞株(ATL-2とHUT102)にATRAを添加後のADF発現の差異をRT-PCR法、ノザンブロット法を用いて検討した。(2)HTLV-1(+)T細胞株およびHTLV-1(-)T細胞株(Jurkat)に増殖抑制因子(TGF-β,IFN-γ,TNF-α)を添加しTetra Color Oneで増殖能の変化を測定した。(3)ATL細胞に恒常的に発現しているといわれているNF-κBの発現の変化をATRA添加前後で観察した。すなわちHTLV-1(+)T細胞株(ATL-2とHUT102)とHTLV-1(-)T細胞株(Jurkat)にNF-κBのresponse elementを含むplasmidであるpCD12-CAT, pCD23-CATをtransfactlonし,CAT assayを用いてATRA添加前後のNF-κB活性を比較検定した。(結果)(1)ATRA添加によりHTLV-1(+)T細胞株に対して増殖抑制が認められたがADFの発現に差異は認められなかった。(2)増殖抑制因子(TGF-β,IFN-γ,TNF-α)に対するHTLV-1(+)T細胞株の増殖反応に変化は認められなかった。(3)CAT assayによるNF-κB活性度はHTLV-1(+)T細胞株ではATRA添加により著明に低下したが、HTLV-1(-)T細胞株ではATRA添加前後で変化は認められなかった。(考察)ATRAのATLへの作用機序として、(1)ATRA添加による増殖抑制因子の誘導作用は否定的であった。(2)NF-κBの発現はATRA添加により著明に抑制されることが観察され、直接的にNF-κBの発現を何らかの形で抑制している可能性が示唆された。以上よりATRAはATLに対する新しい治療法として確立される可能性が示唆された。 今後患者より採取したPBMCでも同様の結果が得られるかを検討する予定である。
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