2002 Fiscal Year Annual Research Report
病態腎におけるRhoおよびRhoキナーゼ作用の分子メカニズムの検討
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14770560
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神田 武志 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80317114)
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Keywords | Rhoキナーゼ / 腎障害 / 細胞増殖 / p27 |
Research Abstract |
(目的)Rho/Rhoキナーゼ系は、多くの標的分子の活性化を介して細胞増殖など多彩な細胞機能の調節に関与することが知られるようになった。一方、腎における検討では、一過性腎障害を示すThy1腎炎でRhoキナーゼ阻害薬が細胞増殖を抑制することが報告されているが、慢性腎障害における検討はされていない。今回、高血圧を伴う慢性腎障害の腎障害進展機構において、Rhoキナーゼの役割を検討した。 (方法)6週令の雄SHRに対し5/6腎摘を施行し、高血圧合併慢性腎障害モデルを作成した。作成後コントロール群とRhoキナーゼ阻害薬(fasudil,3mg/kg/日)投与群に分け、2週間毎に血圧・尿蛋白を測定し、食餌変更後6週で、血液データならびに腎組織の評価を行った。 (結果)腎障害作成8週目において、血圧は軽度の上昇(217±14mmHg)を示した。fasudil投与により血圧は軽度低下したが(208±8mmHg)、無投薬群と有意差を認めなかった(p>0.1)。一方、蛋白尿は無投薬群(124±16mg/日)に比しfasudil投与群(79±12mg/日)で有意な減少を示した。腎組織に対する影響では、腎障害作成により発現した細動脈硬化病変、糸球体メサンジウム細胞の増殖亢進、ならびに尿細管の萎縮、間質の炎症性変化が、fasudilにより有意に改善した。さらに、5/6腎摘により糸球体ならびに尿細管間質のPCNA陽性細胞は増加したが、この変化はfasudil慢性投与により有意に抑制された。腎組織におけるRhoキナーゼの発現ならびに活性をウエスタンブロッティングにより検討したところ、同週令のSHRに比し5/6腎摘により、腎皮質のRhoキナーゼの蛋白発現、活性はともに増加し、fasudil投与によりRhoキナーゼ活性は有意に抑制された。さらにfasudilはサイクリン依存性キナーゼ阻害蛋白であるp21の発現には影響を与えなかったが、p27の発現を亢進させた。 (考察)高血圧合併腎障害の進展に、Rhoキナーゼの活性亢進が関与することが示唆された。さらにRhoキナーゼの抑制は、血圧には依存しない腎局所での保護作用を示すことが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)