2002 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性神経障害におけるインスリン作用異常の役割(インスリン受容体から見た検討)
Project/Area Number |
14770593
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉本 一博 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (70271799)
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Keywords | 糖尿病性神経障害 / インスリン受容体 / 神経再生障害 |
Research Abstract |
1.1型と2型糖尿病の比較研究 現在まで、平成15年度以降において実験に用いるための末梢神経組織の採取を行っている。適齢10週の雄性ウイスターラットにストレプトゾトシン40mg/kgを尾静脈より投与して1型糖尿病モデル動物を作成している。糖尿病発症後2,4,6,8,27週目(各n=5-7)のラットおよび週齢と性を合わせた非糖尿病正常ウイスターラット(各n=5-7)から、両側の坐骨神経、腰椎後根神経節(14-6)、腓腹神経を採取している。2型糖尿病モデル動物としては肥満Zuckerラットを用いて、今後週齢と性を合わせて同様に神経組織を採取する予定である。 2.末梢神経損傷実験 現在まで、週齢10週の雄性非糖尿病正常ウイスターラットの坐骨神経を挫滅し、挫滅神経局所とその支配1次感覚ニューロンの存在する腰部後根神経節におけるインスリン受容体(IR)蛋白の発現をウエスタンブロットと免疫染色法を用いて経時的に検索している。その結果、神経挫滅後1日目から挫滅局所におけるシュワン細胞のIRの発現は著明に増加しており、この発現の増加は神経挫滅後7日目までも認められた。一方、その支配後根神経節では、分子量95kDaのIRβ鎖の発現が神経挫滅後4日目から急激な減少を示した。この後根神経節での神経挫滅後のIR蛋白の発現低下の時期は、挫滅神経局所における神経線維の軸索変性が形態学的に最も顕著になる時期と一致している。実験に用いたラットにおける生体内のインスリンレベルには変化が認められなかったため、これらの結果はIRの発現やシグナル変化そのものが末梢神経線維の形態保持や損傷神経の修復に関与している可能性を示唆するものと考えられる。今後、神経挫滅後のIR発現の変化を更に長期間追跡調査すると共に、この変化が対照的な体内インスリンレベルを有する1型および2型糖尿病モデル動物において、それぞれどの様な変化を示すのかについても比較検討する予定である。
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