Research Abstract |
われわれは,肺表面活性物質surfactantを除去して作成した傷害肺に対して,人工酸素運搬体であるリポソーム包埋ヘモグロビン(liposome encapsulated hemoglobin, LEH)を用いて部分液体換気(partial liquid ventilation, PLV)を施行し,ガス交換の改善および肺組織の保護効果があることを報告してきた.今回,部分液体換気において,炎症性サイトカインであるIL-8を,液体換気液,肺胞洗浄液中で測定し,肺組織保護効果について液性因子の面から検討している. 【方法】体重2.5kgの日本家兎を用い,気管切開挿管後FiO2 1.0,TV10ml/kgにて機械換気,20ml/kgの生食で肺洗浄を数回行ないsurfactantを除去し,動脈血酸素分圧が100mmHg以下となった時点で傷害肺成立とした.LEHを用いたPLV群(n=6)と機械換気のみ行なう群(n=4)について90分間経時的に,心拍数,動脈圧,血液ガスを計測した.両群共に傷害肺作成時の肺洗浄液を,機械換気群では90分後に肺胞洗浄液を,PLV群では30,60,90分後に液体換気液を採取し,IL-8を測定した.IL-8はELISA法にて測定した. 【結果】循環動態に関しては両群共に安定していた.Pa02は機械換気群では低値のまま推移したが,PLV群においてはLEH投与直後より著明な改善を認めた.肺洗浄液,液体換気液中のIL-8は,機械換気群にて直後44.6(pg/ml),90分後4042.0,PLV群では直後45.6,30分後2,419.6,60分後13,572.0,90分後25441.2と,PLV群において機械換気群を上回るIL-8の上昇を認めた. 【今後の課題】PLV群においてもIL-8の上昇を認めたことは肺組織保護効果には,他の因子からの検討も必要であると考えられる.
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