Research Abstract |
【目的】ヘルニアの自然消退過程と神経根性疼痛の関係を明らかにすべく,体重300-350gのSDラット30匹を用い、以下の実験を行った.【方法】尾椎の2椎間に圧迫が加わるようにイリザロフタイプの圧迫装置を4週,8週,12週間装着した(4週群,8週群,12週群,それぞれn=6).装着解除後,ただちに尾椎を切断し,圧迫椎間の髄核のpHをマイクロpHメーターで計測した.計測後,髄核を線維輪と共に摘出し,椎弓下に左側L4,L5神経根上に留置した.対照は無処置ラットの尾椎で同様にpH計測の後,髄核+線維輪モデルを作成した(対照群,n=6).経時的に処置後3週まで両足部の圧,熱刺激に対する感受性の変化を観察した.統計学的にはt検定を用いて,P<0.05で有意差ありと判定した.【結果】4週群,8週群,12週群のpHはそれぞれ685,6.90,7.07であり,対照群のpH7.18と比較すると,4週群,8週群で有意に低下していた.対照群を含めた全ての群で処置後2日目から患側足部に圧刺激に対する痛覚過敏が出現したが,圧迫群は対照群に比し痛覚過敏の程度は大き<,4週群では処置後11日まで,8週群では処置後7日まで,12週群では処置後4日まで痛覚過敏の増強を認めた.運動麻痺,熱刺激に対する痛覚過敏の発現は観察されなかった.【考察】本研究は(1)動物モデルで圧迫により変性を受けた髄核が正常の髄核よりも強く疼痛反応を引き起こすこと,(2)圧迫を受けた変性髄核の中でpHが低い4週群,8週群の方が,pHがそれほど低くない12週群よりも長期にわたって疼痛反応を増強させること,の2点を初めて明らかにした.しかしながら,椎間板組織そのものの形態学的な縮小度と痛覚過敏反応は統計学的な相関を認めなかった.今後消退過程にあるヘルニア組織の形態学的,免疫組織化学的所見と疼痛反応の関係について調べる予定である.
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