2003 Fiscal Year Annual Research Report
EPH/EPHRINシグナル伝達路を介した尿路上皮発癌の分子機構に関する研究
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14770805
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 博之 京都大学, 医学研究科, 助手 (20324642)
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Keywords | 膀胱癌 / EPH / チロシンリン酸化酵素 |
Research Abstract |
EPHチロシンキナーゼ受容体およびそのリガンド(ephrin)は神経系の形成や血管系の構築の制御に関与している。近年、消化器癌・肺癌・神経芽腫などの悪性腫瘍においてEph Bファミリーの発現異常が報告されているが、未だ尿路上皮腫瘍における意義は分かっていない。本研究では、EphA/Bファミリーの尿路上皮癌の発生進展における関与を明らかにするために、その発現の検討を行った。まず、尿路上皮腫瘍細胞株として、7種類(DSH1,RT112,253J, T24,EJ, TCCsup,5637,Scaber)におけるEph A/Bファミリーの検討を行った。EphA2・B4はほぼ全ての細胞株で発現していたが、表在性膀胱腫瘍細胞株DSH1では低発現であった。他のEph-familyの発現は様々であった。そこで、EphA2およびEphB4について膀胱腫瘍臨床検体71例を用いて発現を検討した。EphB4では、Real-time RT-PCR法では正常尿路上皮では低い発現を認めるのみであったが、尿路上皮癌では20例(28.1%)で高発現を示した。しかし、発現量はstageやgradeとは相関はしなかった。免疫染色法で検討したところ、EphB4は左常尿路上皮では基底層に一致して発現しており、分化するほど染色性は低下していた。一方、EphA2の発現はRNAレベルではstageやgrade・p53の変異とともに低下していたが、染色性はstageとともに亢進していた。浸潤性膀胱癌において、EphA2の染色性と予後を比較検討したところ、発現の亢進している腫瘍では、5年生存率50%と不良であるのに対し、発現が低い腫瘍では予後は良好であった。これらの結果はEphA2が膀胱癌の予後規定因子として重要であることを示していることが明らかになった。
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