2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト卵巣におけるSCF,HGFおよびKGFの発現と細胞間相互作用の解明
Project/Area Number |
14770849
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
谷口 文紀 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (40322218)
|
Keywords | Ovary / ERK / Signal transduction |
Research Abstract |
本研究では,ヒト卵巣におけるHGF(Hepatocyte growth factor)とSCF(Stem cell factor)の相互作用およびプロゲステロン(P_4)産生について検討した. 体外受精時に顆粒膜細胞を,手術時に莢膜細胞と卵巣間質細胞を採取した.また,ヒト卵巣顆粒膜細胞腫から樹立されたKGN細胞を対象とした.これらの細胞におけるHGFとSCF遺伝子ならびに各々の受容体遺伝子の発現をRT-PCRにて検索した.KGN細胞にゴナドトロピンあるいはHGFを添加し,48時間後の培養上清中のSCFおよびP_4産生量をEIAで測定した.莢膜細胞にSCFを,KGN細胞にHGFを添加して細胞増殖能をMTT assayで検討した.KGN細胞におけるHGFのシグナル伝達については,リン酸化ERK1/2蛋白発現をWestern blot法で評価した. 顆粒膜細胞とKGN細胞にSCFおよびc-met遺伝子発現を認めた,莢膜細胞と卵巣間質細胞では,それらに加えてHGFとc-kit遺伝子発現が観察された.HGFの添加は顆粒膜細胞のSCF遺伝子発現を,SCFの添加は莢膜細胞のHGF遺伝子発現を増強した.LH(100mIU/ml)あるいはHGF(100ng/ml)の添加は,KGN細胞からのSCF産生量をそれぞれ対照の1.7倍と1.9倍に促進した.LHの添加により,KGN細胞におけるP_4産生は対照の1.5倍に増加したが,HGF(50ng/ml)の添加により対照の78%に抑制された.HGF添加はリン酸化ERK1/2蛋白を増加させた.ヒト卵巣において,顆粒膜細胞に発現するSCFと莢膜細胞に発現するHGFはパラクリン因子としてpositive feedback loopを形成し,細胞増殖やP_4産生に影響を及ぼすことが初めて示された.
|