2002 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠中毒症の発症予知および後遺症の危険性に関する研究―Shear stress testによる血管内皮機能を中心に―
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14770856
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
渡辺 員支 高知医科大学, 医学部附属病院, 助手 (80281187)
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Keywords | 妊娠中毒症 / 血管内皮 / 血中脂質 / 酸化LDL / LDL粒子サイズ / 血管拡張反応 |
Research Abstract |
これまでの妊娠中毒症妊婦の病態解析について基礎的、臨床的検討を行い、血管内皮障害がその基本病態であることをを明うかにしてきた。しかし、妊娠中毒症の発症予知に関しては、未だ確立された方法は得られておらず、中毒症後遺症の危険性に関しても十分な検討はなされていない。そこで今年度は、(1)妊娠中毒症の発症と中毒症後遺症の危険性の予知が、shear stress testによる血管拡張反応(FMD)用いて、血管内皮機能を評価することにより可能であるか検討した。中毒症妊婦の産褥1,3カ月目に臨床所見として、血圧、血液検査の推移を、血管内皮機能の評価としてFMDを測定し、正常妊婦、褥婦と比較検討した。中毒症群は正常群に比較し、trigriceride(TG)、hematocrit(HT)、creatinine(Cr)、尿酸(UA)が有意に高値を示したが、産後1カ月目には収縮期血圧、UA以外いずれも両群に差を認めなかった。3カ月目にはいずれも有意差を認めなかった。FMDは、妊娠中、中毒症群は正常群に比較し有意に低値を示した。産後1カ月でも有意に低値を示したが産後3カ月には正常群と有意差を認めなくなった。しかし、そのなかでも正常域にまで改善する群と低値で推移する群に分かれることが判明した。この結果から中毒症妊婦では、産後1カ月で中毒症の臨床所見はほとんど改善するにも拘わらず、その後も血管内皮障害が残存する症例の存在することが明らかとなった。FMDは中毒症の後遺症や、次回妊娠時の中毒症の再燃に対する発症予知に応用できる可能性が示唆された。(2)妊娠中内皮機能障害をきたす重要な要因であると報告されている脂質や酸化LDL濃度測定が、妊娠中毒症の発症と中毒症後遺症の危険性の予知に有用か検討した。中毒症妊婦における、脂質や酸化LDL濃度、易酸化性、および血管内皮機能をshear stress testを用いて正常群と比較検討した。脂質濃度は、TGが正常群に比較し、中毒症群で有意に高値を示したが、総コレステロール、HDLコレステロールでは差がなかった。FMDは、中毒症群が正常群に比較し、有意に低値を示し、血管内皮障害が示唆された。採取したLDLを酸化させ、incubation後脂質の最終酸化代謝物であるTBARS濃度を測定し、LDLの易酸化性の指標とした。またLDL粒子サイズを測定した。中毒症群が正常群に比較し、有意に高値を示し、LDL粒子サイズは中毒症群では小粒子化していた。TGはLDL粒子サイズと有意な負の相関を、LDL粒子サイズとTBARSはFMDと有意な負の相関を認めた。この結果から、中毒症妊婦では血管内皮機能が著しく障害されていることが示唆された。また中毒症妊婦における血中TGの増加は、易酸化性の亢進した小型LDLを産生することにより、血管内皮に障害的に作用する可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Akihiko Wakatsuki: "Lipoprotein particles in preeclampsia : Susceptibility to oxidative modification"Obstetrics and Gynecology. 96. 55-59 (2000)
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[Publications] Akihiko Wakatsuki: "Melatonin protects against oxidized low-density lipoprotein-induced inhibition of nitric oxide production in human umbilical artery"J. Pineal Research. 31. 281-288 (2001)