2002 Fiscal Year Annual Research Report
胎盤に存在する内因性レトロウイルスと産科的疾患の関連性に関する研究
Project/Area Number |
14770858
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池田 裕一郎 長崎大学, 医学部附属病院, 助手 (60315249)
|
Keywords | syncytin / 内因性レトロウィルス / 絨毛 / 子宮外妊娠 / 定量的RT-PCR |
Research Abstract |
Syncytinは絨毛の発育,とくにsyncytiotrophoblastのcell fusionに関連する蛋白として知られ,その遺伝子の発現は内因性レトロウイルスと関連していると言われている。今年度はまず,正常絨毛と子宮外妊娠における絨毛を用い,syncytinのRNAの発現の差を比較検討することを目的とした。当科を受診し,同意の得られた患者より採取した妊娠初期の絨毛4検体,および子宮外妊娠のため腹腔鏡により手術を施行し,採取した絨毛4検体からRNA抽出キットを用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを用い,syncytin遺伝子を増幅するのに特異的なプライマーを用いて定量的リアルタイムRT-PCR法(ABI7900)により増幅し,syncytin遺伝子RNAを定量した。同時にβ-actinのプライマーを用いて同様に定量的RT-PCRを施行し,正常および子宮外妊娠の絨毛より発現するsyncytin遺伝子量/β-actin遺伝子量の比を算出し,比較検討した。結果は,両群の絨毛より採取されたRNAの発現量には有意な差は認められなかったが,子宮外妊娠の絨毛でsyncytin遺伝子の発現が増加している傾向があった(79.3±31.0 vs. 171.1±33.9 p=0.1047)。今回の結果より,子宮外妊娠の絨毛は正常妊娠の絨毛に比べ,syncytiotrophoblastのcell fusionがより強く起こっている可能性があり,そのため卵管内に着床をし,子宮外妊娠がおこるのではないかと推察された。今後,さらに症例を増やし,その発現の比較検討を進めるとともに,免疫染色などでその発現およびその局在を明らかにする必要があると思われる。また,子宮外妊娠の卵管を温存した症例においては,その発現とhCGの推移を検討することにより,syncytinの発現量が卵管温存の指標になりうるかどうかを検討していきたい。
|