Research Abstract |
<c-kit mutantマウスでの実験> [方法]生後10日,4週齢および11週齢マウスWBB6F1(wild type)+/+,78個のアミノ酸の欠落があるheteroW/+,アミノ酸の点突然変異をもつhetero W^v/+,機能喪失性突然変異遺伝子を2個持つW/W^vを使用した.配偶子形成におけるc-kitの発現をまずモデルとして精巣組織における蛋白と遺伝子発現について検索し,配偶子形成過程での障害の分化stageに関わるc-kitの関与を,Flow cytometry, RT-PCR,免疫組織染色を行い検討した. [結果]W/W^v mutantマウスではwildtypeおよびheteroの精巣に比較し,重量・細胞数は有意に低下していた.Flow cytometry分析の結果から,c-kit陽性細胞数はwildtype, hetero mutantマウスでは生後10日齢が最も多く,生後4週齢生後11週齢の性成熟マウスは有意に邸値を示し,W/W^v mutantマウスではいずれの週齢でも低値を示した.このことから配偶子形成の強い抑制とmaturation arrestの状態が示された.また,RT-PCRにおいて各遺伝子発現はwild typeとW^vではほぼ同じ位置に認められたが,Wは2箇所に認められ,新たな遺伝子発現が確認された. [結論]以上より,c-kitは配偶子形成過程の初期段階に深く関与し,不妊とくにmaturation arrestの発生にかかわる因子であることが示唆された. <配偶子形成障害モデル実験> [方法]生後7週齢ICR系雄性マウスを1週間予備飼育後より,doxorubicin(DXR)0.15mg/kgを週2回5週間腹腔内投与した.(no.2)コントロールとしてdoxorubicinのかわりに生理食塩水を腹腔内投与した.(no.1)また,DXRを同様に投与しつつ同時に予備飼育時より15週間TJ41(補中益気湯)1,2,4g/kg, TJ7(八味地黄丸)1,2,4g/kg, GTE(green tea extract)0.2,0.5g/kgをそれぞれ経口投与した.(no.3〜no.10)さらにDXRは投与せずにTJ41 2g/kg, TJ7 2g/kg, GTE 0.5g/kgをそれぞれ単独投与した.(no.11〜no.13)以上13群各10匹,計130匹(精巣260個)につき検討した.(()内は,各群のno.) [結果]各群ともマウス重量および各組織重量には有意差は認められなかった.精巣重量はDXR単独投与群が正常群の約60%に減少しており強い抑制が認められた.TJ41併用投与群では4g投与群でほぼ正常に近い値であり,TJ7,GTE併用投与群ではいずれの投与量でも精巣重量に差は認められなかった.TJ41,TJ7,GTE単独投与群ではいずれも正常より精巣重量は増加していた.またsertoli cell onlyの精細管の比率はDXR単独投与群が有為に高く,その他の群ではいずれも低値であった.RT-PCRによりc-kit mRNAの半定量を行ったところ,正常に比較しDXR投与群では有意な低値を認めた.またTJ41,TJ7およびGTE併用群ではいずれも投与量依存的にc-kitの増加が認められ,単独投与群では正常群よりも増加していた. [結論]DNA合成阻害薬物により,maturation arrestの状態が示され,免疫学的,遺伝子的検索によりc-kit発現の著明な低下が示唆された.TJ41,TJ7およびGTEはc-kitのmRNAの発現を促進させ転写を活性化することにより,c-kit蛋白を増加させた.またその抗酸化作用によりdoxorubicinのDNA障害を阻害することで配偶子形成障害をrescueすることが可能であった.
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