2002 Fiscal Year Annual Research Report
末梢神経性嗅覚障害の早期改善・治癒のための基礎的研究
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14770904
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
齋藤 正一郎 愛媛大学, 医学部, 助手 (60325371)
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Keywords | 嗅覚障害 / 神経栄養因子 / プロサポシン / 嗅覚系 / 神経再生 / 発生 / In situ hybridization / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
嗅神経細胞の障害に起因する末梢神経性嗅覚障害は、患者のquality of lifeを著しく低下させ、大変な精神的苦痛を強いる疾患である。本申請研究では、従来の治療法に加えて、神経細胞の保護や再生促進効果の高い神経栄養因子の点鼻投与による末梢神経性嗅覚障害の早期改善・治癒を目的としており、そのために神経栄養因子プロサポシンに注目して研究を行ってきた。平成14年度科学研究費補助金により、以下の点について解明した。 1)一次嗅覚系(嗅上皮、主嗅球、鋤鼻器、副嗅球)におけるプロサポシン合成細胞の同定 免疫組織化学的手法により嗅上皮の基底細胞に強い反応が認められ、in situ hybridization法では嗅上皮の嗅神経細胞全体に強いシグナルが認められた。これより、嗅神経細胞はプロサポシンを分泌しており、基底細胞はそのプロサポシンを取り込んでいることが示唆され、また基底細胞は嗅神経細胞の幹細胞であることから、嗅神経細胞はプロサポシンを介して基底細胞の活性を調整しているのではないかと考えられた。また、アポトーシスに対して強い抵抗性を示す嗅球の僧帽細胞、房飾細胞および僧帽・房飾細胞が、プロサポシンmRNAを大量に有することを明らかにした。 2)一次嗅覚系の発生におけるプロサポシンの発現パターンの解明 生後0日から成体に至るまでの一次嗅覚系において、プロサポシンの局在について明らかにした。生後発生を通して、嗅球の僧帽細胞、房飾細胞、僧帽・房飾細胞が大量にプロサポシンmRNAを有する事を明らかにし、また、嗅上皮と鋤鼻器の成熟過程におけるプロサポシンの機能的関与の相違を示す知見が得られた。 これらの結果は、末梢神経性嗅覚障害に対してプロサポシンの有効性を強く支持するものであり、またプロサポシン投与のための基礎的データとして重要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Saito S., Matsui T., et al.: "Lectin-histochemical study on the olfactory organ the newt, Cynops pyrrhogaster, revealed heterogeneous mucous environment in a single nasal cavity"Anatomy and Embryology. (In press). (2003)
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[Publications] Miyawaki K., Saito S., et al.: "Nuclear localization of beta-catenin in the vegetal pole cells during the early cmbryogenesis of the starfish, Asterinapectinifera"Development, Growth and Differentiation. (In press). (2003)
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[Publications] Kobayashi N., Saito S., et al.: "An anomalous flexor of the little finger"Clinical Anatomy. 16(1). 40-43 (2003)
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[Publications] 小林 直人, 齋藤 正一郎, 他: "細胞突起形成機構の分子形態学的解析"生体の科学. (In press). (2003)
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[Publications] 齋藤 正一郎, 他: "両生類の嗅球におけるサブセット構造"Aroma Research. 3(1). 16-25 (2002)
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[Publications] 齋藤 正一郎, 谷口 和之: "両生類の嗅覚系に関する比較形態学的研究"獣医畜産新報. 55(4). 335-337 (2002)