2003 Fiscal Year Annual Research Report
内リンパ水腫における蝸牛の形態学的変化とその防御に関する研究
Project/Area Number |
14770906
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
篠森 裕介 愛媛大学, 医学部附属病院, 助手 (60335908)
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Keywords | 内リンパ腫 / ラセン靱帯線維細胞 / taurine |
Research Abstract |
本年度研究実施計画は実験的内リンパ水腫における蝸牛の免疫組織化学的検討および内リンパ水腫への有効性が期待される抗酸化剤の効果を検討することであった。本研究に用いた前庭水管遮断による内リンパ水腫モデルはメニエール病のモデルとされている。しかし本モデルにおいて上皮下の線維細胞はあまり注目されて来なかった。この線維細胞は内耳の恒常性維持に不可欠と考えられており、蝸牛ラセン靱帯に多く存在する。前庭や半規管の感覚上皮下にもラセン靱帯と同様の線維細胞で構成された組織が存在する。これらの組織の役割、変化を知ることは内リンパ水腫の病態解明につながる可能性がある。今回着目した、taurineは中枢神経では2番目に多く存在するアミノ酸で、その主な役割として細胞容積や細胞内浸透圧の調節があり、浸透圧の変化に敏感に反応して放出されたり取り込まれたりすると考えられている。内リンパ水腫はその形態的特徴から電解質や浸透圧などの内耳液の恒常性が破綻した状態と考えられ、障害を受けた細胞にはtaurine量の変化が出現する可能性があるため、その局在を免疫組織化学的に観察した。その結果、蝸牛のラセン靱帯、ラセン唇のみならず、前庭および半規管の感覚上皮下の線維細胞においてもtaurineの染色性が認められ、内リンパ水腫耳ではその染色性の減弱を認めた。また、染色性の減弱は内リンパ水腫の期間が長いほど強調される傾向があった。ラセン靱帯線維細胞やラセン唇、前庭上皮下の線維細胞のnetworkには内耳恒常性維持に重要なK^+recycling経路が存在すると予想されているが、taurineの染色性の減弱はそれらの領域で一様に認められたため、前庭水管遮断により、K^+recycling経路を構成する細胞群に容積変化をきたすストレスが加わった結果、内リンパ水腫を発症する可能性が示唆された。内リンパ水腫への有効性が期待される抗酸化剤の効果については現時点では進行中であり、結果は未だ得られていない。
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