2002 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病網膜症における高血糖と網膜神経細胞死の因果関係の解析
Project/Area Number |
14770956
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 誠 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (80273788)
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 緑内障 / アポトーシス / 網膜 / 神経節細胞 |
Research Abstract |
雄Sprague-Dawleyラットにketamine/xylazine鎮痛・無動下で、尾静脈からストレプトゾトシン(STZ,60mg/kg)を(対照には基材を)投与して、I型糖尿病モデルを作製した。1週間後、血糖を測定し、250mg/dl以上のものを糖尿病動物として使用した。糖尿病発症1ヶ月後に、同様の麻酔下で、STZ糖尿病ラットおよび対照ラットそれぞれ片眼の2〜3本の上強膜静脈を焼灼して、慢性の高眼圧を惹起させた。陰性対照として、結膜剥離のみを行ったsham-operated眼も用意した。眼圧上昇の確認は、ウレタン麻酔下で、トノペン【○!R】を用いて行った。眼圧上昇後1週間、1ヶ月,2ヶ月の時点で、ラットを安楽死させ、1グループでは、網膜を摘出して、伸展標本を作製し、TUNEL (terminal dUTP nick end labeling)染色を行った。網膜単位面積当たりのTUNEL陽性アポトーシス細胞をカウントし、糖尿病群と非糖尿病群の眼圧上昇眼と非上昇眼の間で、経時的に比較検討した。N=4を2クール行った。検定には、two-way ANOVAを用いた。 非糖尿病・非緑内障眼では、平均(±SD)5.2±1.2/0.5cm^2のTUNEL陽性細胞を認めたのに対し、糖尿病・非緑内障眼では、32.5±7.8/0.5cm^2のTUNEL陽性細胞を認め(P<0.01)、これは、経時的に不変であり、過去の報告と一致する。一方、非糖尿病眼では、眼圧上昇1週間、1ヶ月、2ヶ月後にそれぞれ、102.8±33.6,79.7±18.4,62.4±19.7/0.5cm^2のTUNEL陽性細胞が出現するのに対して、糖尿病眼では、眼圧上昇後同時期に、それぞれ、137.2±39.1,118.5±29.4,99.7±28.3/0.5cm^2のTUNEL陽性細胞が認められた(P<0.01)。 糖尿病と高眼圧は、網膜神経細胞死に関して、相加効果のあることが判明した。両病態の細胞死に関する細胞情報伝達経路が独立している可能性が示唆されるとともに、緑内障性視神経障害の危険因子として、糖尿病が関与する機序の一端が判明した。
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