2002 Fiscal Year Annual Research Report
上眼瞼ミュラー筋における求心性神経終末に関する組織学的研究
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14770991
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
杠 俊介 信州大学, 医学部・形成外科, 助手 (10270969)
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Keywords | ミュラー筋 / 上眼瞼挙筋 / 不随意収縮 / 涙腺神経 / 解剖 / 免疫組織化学 / 求心路 / 有髄神経 |
Research Abstract |
ミュラー筋の神経支配の詳細を検索するために研究を行った。 手術中に片側のミュラー筋を伸展すると両側の上眼瞼挙筋に不随意な収縮が観察されること、およびヒトの上眼瞼挙筋内に固有知覚受容体が見出されていないことから、開瞼を維持する上眼瞼挙筋の不随意収縮を引き起こす固有知覚受容体がミュラー筋内にあるものと推定して研究を遂行した。9体の解剖学実習用屍体の片側眼窩内を実体顕微鏡下に観察し、他方の上眼瞼を組織学的に観察した。組織切片に、アザン染色、S-100蛋白とチロシンヒドロキシラーゼに対する抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、光学顕微鏡下に観察した。上眼瞼挙筋腱膜とミュラー筋に挟まれた部位の疎性結合組織内にある神経血管束からミュラー筋内の上眼瞼挙筋に近い部位に入り込む細いS-100蛋白陽性神経が観察された。その疎性結合組織内の神経束の数はミュラー筋の近位側で多かった。これらの神経束は涙腺組織内を貫いて涙腺神経に連続していた。涙線組織に入り込む部位の神経束は、S-100蛋白陽性神経線維とチロシンヒドロキシラーゼ陽性神経線維をともに含むものと、S-100蛋白のみ陽性でチロシンヒドロキシラーゼは陰性の神経線維のみ含むものがあった。S-100蛋白陽性の神経は有髄神経であり、チロシンヒドロキシラーゼ陽性神経はカテコールアミンを伝達物質とした神経である。これらの結果より、ミュラー筋は近位部で涙腺神経につながる神経から神経支配を受けており、その中に、遠心路である無髄のカテコールアミン作動性交感神経節後線維と、求心路と考えられる有髄の自律神経でない神経線維が含まれているものと考えた。すなわち、ミュラー筋は、涙腺神経内を通ってきた交感神経節後線維の刺激により収縮を起こすとともに、ミュラー節自体の緊張状態を涙腺神経につながる有髄神経を介して中枢に伝えており、それが上眼瞼挙筋の不随意収縮を起こすようだ。
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