口腔扁平上皮癌細胞の生物学的活性におけるEBV感染の関与

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14771012
• Research Institution: Tokyo Dental College
• Principal Investigator: 嶋 香織 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (10343526)
• Keywords: 口腔扁平上皮癌 / EBV / 細胞増殖 / 浸潤能 / LMP-1

Research Abstract

Epstein-Barr virus(EBV)は、リンパ腫や上咽頭癌の発生との関連性が知られているが、その一方で発癌との関連性を否定する報告もある。本研究の目的は、癌化した細胞の生物学的活性(特性)におけるEBVの影響を検索することである。
平成15年度は、当講座にて所有の口腔扁平上皮癌細胞株HSC2,HSC3,HSC4,Ca9-22,SAS, KBならびに扁平上皮癌の1組織型である類基底細胞癌由来細胞株BSC-0F(北海道医療大学・安彦善裕先生より供与)、対照であるヒトkeratinocyte由来細胞株HaCaTにおいて、Bam-HI-W領域に設定したprimerによるPCRと、EBV構成蛋白であるLMP-1(latent membrane protein-1)に対するマウス・モノクローナル抗体による免疫組織化学的検索でEBVの感染を検索したが、いずれも陰性であった。PCRの陽性対照として細胞株B95-8より抽出したgenomic DNA(九州大学・坂井英隆先生より供与)を用いた。また、本年度の研究計画書に記載したごとく、HaCaTを基準に上記の細胞の増殖能、運動能、浸潤能を検索し、他の癌細胞と比較して著しく差の見られたものにLMP-1の遺伝子導入を行う目的で、予備実験として細胞増殖能を検索した。その結果、BSC-0Fは細胞増殖が速いことが分かった。さらに、当講座における研究で、BSC-0Fはosteopontinの発現が高いこと(投稿中)や細胞間結合装置であるconnexin43の発現が低いこと(投稿準備中)が明らかとなったが、これらの検索中に、Matri-gelinvasion chamberを用いた実験の結果、BSC-0Fは浸潤能が高いことを明らかとした。これらの結果をふまえ、今後はLMP-1をBSC-0Fに導入することにより、増殖能、浸潤能の変化を検索する予定である。