Research Abstract |
現在,ヒトゲノム研究は構造解析から機能解析への移行期を迎えており,ゲノムに記録されている機能情報を読みとるためのアプローチが様々の方法で行われている。一塩基多型(single nucleotide polymorphism ; SNP)などのゲノム解析に代表されるゲノムの多様性を遺伝疫学的アプローチによって癌関連遺伝子の同定やそれらの応用治療も始まっている。SNPは,癌化や癌の進展に関連する遺伝子の多型マーカーとして遺伝子の同定に有用であり,また遺伝子のコード領域のcSNPやプロモーター領域のrSNPは遺伝子発現やタンパク機能に影響して遺伝子産物の質的異常・量的調節異常につながるため,臨床病態と癌化の機序の解明に応用できる。これらの点に注目し,口腔患者67例(原発部限局性・非転移例25例,転移例7例,後発転移例19例,晩期再発例8例,および多発例が9例)の血液と手術摘出癌組織からDNAを抽出し,細胞周期調節因子であるサイクリンD1の遺伝子(CCND1)に存在するSNP(AA, AG, GGの3種類の遺伝子型)について,SSCP法で遺伝子多型を検出した。頭頚部癌では,短期間に再発する例がGG型に高かったことが報告されているが,まだ口腔癌での検討は行われていない。今回の検索の結果,GG型が17例(25%),AG型が35例(51%),AA型が16例(23%)であった。今後,口腔多発癌と晩期再発癌で遺伝子の特徴的変化を検索し,単発癌例における多発化や,晩期再発,原発部位には再発がないが転移を生じやすい症例群を予測・判別するために,口腔癌例を,前述のごとき臨床病態別に5群,すなわち,初発・非転移例,転移例,後発転移例,晩期再発例,および多発癌例に分類し,これら各群での臨床病理学的事項と各種の癌関連因子の異常との相関について検討する予定である。
|