Research Abstract |
右利きの健康成人11名に手づかみ食べを5回施行させ動作解析を行った.計測条件は被験食品(ボーロ)を肘90度屈曲位および左右手指伸展位の中指先端(以下中位とする)線上の体幹正面および左右(以下利き手側を右側,利き手側の反対側を左側とする)に加え,前後10cm(以下遠位,近位とする)の9ヶ所に置き,マーカーを眉間,頚切痕,右肩峰,右上腕骨外側上顆,右尺骨下端,右小指尺側突起に貼付した.この動作解析の結果から,眉間から右小指尺側突起の2点間距離が最も長い時点を動作開始時,最も近い時点を動作終了時とし,動作開始時から動作終了時までの肘関節の変位(X,Y,Z軸方向)および肘関節運動軌跡長を求め検討を行った.その結果,(1)肘関節の変位においてX軸方向への変位では遠位,近位において左側の変位が最も小さかった.中位においてはいずれの位置においても変位は小さく,右側,正面,左側間に有意な差は認められなかった.Y軸方向への変位では,遠位においては右側,中位においては正面,近位においては左側が最も小さい変位であった.Z軸方向への変位では,遠位においては右側,中位においては正面,近位においては左側が最も小さい変位であった.(2)肘関節運動軌跡長において遠位では右側および正面の値はほぼ同じ長さであり,左側において最も長かった.中位では右側,左側がほぼ同じ長さであり,正面において最も短かった.近位では左側において最も短く,正面,右側の順に短い値を示した.手づかみ食べ動作時における動作開始時から動作終了時までの肘関節の運動動態は,体幹から最も離れた遠位において,利き手側と反対側である左側に被験食品を置いた場合に肘関節は右側,正面に比較して,より大きな移動を行う傾向を示した.また,中位正面および近位左側においては,いずれの方向への変位も小さく,肘関節運動軌跡長においても短い値を示した.これらのことから,自食指導の際,遠位では右側および正面,中位では正面,近位では左側に食品を置くことにより,摂食動作をより小さい肘関節の移動の範囲で行うことができると考えられた.
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