2002 Fiscal Year Annual Research Report
水を溶媒として用いる環境調和型合成反応を指向した立体選択的ラジカル反応の開発
Project/Area Number |
14771259
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
上田 昌史 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (00340935)
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Keywords | 水中反応 / ラジカル / インジウム / イミン |
Research Abstract |
一般に、ラジカル種は水に対して安定であることから、ラジカル反応は厳密な無水条件などを必要とせず、中性条件下で反応を行うことができる。これまでに我々は水中でも使用可能なラジカル開始剤としてトリエチルボランに着目し研究を行ってきた。そこで、平成14年度は新規ラジカル開始剤として金属インジウムを用いたラジカル反応を検討した。金属インジウムは、ナトリウムやカリウムに匹敵するほど第一イオン化ポテンシャルが低く、しかも水に対して安定であることから、水中において一電子移動型ラジカル開始剤として働くことが期待された。はじめに、グリオキシル酸のオキシムエーテル誘導体への炭素ラジカル付加反応を検討した。溶媒として水のみや、水-ジクロロメタン混合溶媒を用いた場合では反応は速やかに進行したが、有機溶媒のみで反応を行うと全く反応が進行しなかった。これらの結果から、インジウムを用いたラジカル反応には水の存在が必須であることが明らかになった。次に、他のイミン誘導体としてヒドラゾン類を用いて反応を検討した。その結果、オキシムエーテルを用いた反応よりも高い収率で目的の付加体が得られた。また、本反応をワンポット反応に展開し、水中でのグリオキシル酸からのα-アミノ酸類のワンポット合成法を開発した。最後に、本ラジカル反応の適応性を広げるため、ビニルスルホンなどの電子不足オレフィン類へのMichae1型炭素ラジカル付加反応を検討し、その開発にも成功した。
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