2003 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア原虫由来S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素の挿入配列の機能解明
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14771278
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中西 雅之 岐阜大学, 工学部, 助手 (00281048)
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Keywords | マラリア / Plasmodium falciparum / S-アデノシルホモシステイン / ヌクレオシド系阻害剤 / 生体内メチル化 |
Research Abstract |
熱帯熱マラリア原虫とその宿主であるヒトの間ではS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素の構造に特徴的な差異が存在する。その差異が酵素の諸性質に与える影響を明らかにすることが本研究の目的である。S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素は,古細菌からヒトに至るまで生物界に広く分布しており,生体内メチル化反応を強力に阻害するS-アデノシルホモシステインを分解する機能を担っている。本酵素活性は細胞機能にとって必須であるため,抗癌剤や抗ウィルス剤開発の良い標的となると考えられ,多くの阻害剤がデザイン・合成されてきた。我々はこれまでに,マラリア化学療法剤開発への応用を目的として,マラリア原虫酵素の発現・精製法を確立し,本酵素が哺乳類の酵素とは異なる阻害剤特異性を示すことを明らかにしている。マラリア原虫や植物の酵素には,哺乳類の酵素には存在しない約40残基の挿入配列が見出されるものの,それが阻害剤特異性などの酵素機能に与える影響はこれまで調べられていなかった。また,我々の研究グループでは最近,マラリア原虫酵素の立体構造を解明し,マラリア原虫の酵素にはヒト酵素には存在しない「くぼみ」が存在することを明らかにした。以上の構造的差異について,機能との関連を部位特異的変異導入法で解析した。 挿入配列を削除した原虫酵素は,正常に折り畳まれず,挿入配列が原虫酵素の構造形成に重要であることが判明した。一方,挿入配列を組込んだヒト酵素は活性を維持した状態で精製され,ヒト酵素と同程度のKm値を示した。このキメラ酵素の阻害剤選択性はヒト酵素と同様の傾向を示した。また,原虫酵素に見られる「くぼみ」を形成するようにヒト酵素を変異させると,阻害剤選択性が原虫酵素に近づくことが明らかになった。
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