2002 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニントランスポーター遺伝子の発現調節と抗うつ薬の反応性に関する研究
Project/Area Number |
14771333
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 カオル 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助手 (30255864)
|
Keywords | セロトニントランスポーター / 転写調節 / 抗うつ薬 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
セロトニントランスポーター(5-HTT)は、神経終末においてセロトニンを再取り込みする膜蛋白である。5-HTTのプロモーター約1kb上流の転写調節領域には、20〜23bpの繰り返し配列の回数が異なる多型が報告されているが、発現量と多型との関連については明らかではない。そこで、本年度は、日本人において確認された5-HTT遺伝子の5'上流領域の多型と転写活性に関する検討をおこなった。 5-HTT遺伝子の多型解析はヒト末梢血より抽出したDNAを用いてPCR法によりおこなった。その結果、検討に用いたサンプルには、繰り返し回数が異なる5種の多型が見られた。そこで、プロモーター領域の多型と転写活性との関係についてルシフェラーゼアッセイ法により検討した。それぞれの5-HTT 5'上流領域約2kbについてルシフェラーゼ活性を測定した結果、繰り返し回数による転写活性の差異がみられ、5-HTTの発現調節に影響を与えている可能性が示唆された。次に、10名の日本人を対象として、5-HTT遺伝子型が14回をホモでもつ群と16回をヘテロまたはホモでもつ群に分類し、血小板に発現している5-HTT mRNA量を比較した。末梢血を遠心することにより得た血小板よりtotal RNAを抽出してcDNAに逆転写し、リアルタイムPCR法により5-HTT mRNAを定量した。しかし、血小板に発現している5-HTT mRNA量と5-HTT遺伝子型との間に有意差は認められなかった。 以上より、5-HTT遺伝子の発現調節領域における遺伝子型の差異が転写活性に影響を与えている可能性が示唆された。5-HTT mRNA発現量と遺伝子型との関係についてはさらに例数を増やすとともに、5-HTTをターゲットとする抗うつ薬(セロトニン選択的再取り込み阻害薬)による抗うつ効果との関係についても明らかにする必要があると考えられた。
|