2003 Fiscal Year Annual Research Report
老人保健施設における痴呆高齢者を対象とした園芸療法の効果と評価についての研究
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14771372
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺岡 佐和 広島大学, 医学部, 助手 (60325165)
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Keywords | 園芸療法 / 痴呆高齢者 / 介護老人保健施設 |
Research Abstract |
介護老人保健施設に入所している痴呆高齢者を対象に園芸療法を行なった昨年度の研究結果では、4つの尺度を用いた園芸療法実施前後の比較からは顕著な改善はみられなかったが、質的には対象者に何らかの刺激をもたらしている可能性が示された。 そこで、今年度は中間施設という施設の特性も考慮し、頻繁な入所者の入れ替わりに対応すべく、セッション毎に対象者の様子や、プログラム自体を評価できるよう、評価表の見直しを行なった。 今年度実施したプログラムの記録から、対象者の反応が最も良かったものは、育てたキュウリを収穫し、それを使って浅漬けを作った回である。 施設に入所した高齢者の活動は、「できる活動」と「できない活動」とに分けられるが、「できない活動」には「能力が及ばずできない活動」と「能力はあるのにさせてもらえない活動」とがあると考える。この浅漬けを作ったプログラムには、対象者が施設入所以来、触れることがなかった丸のままのキュウリに触れたり、包丁を握りキュウリを刻んだり、浅漬けの素をふりかけ、キュウリをもむという活動が含まれていた。これはかつて在宅で対象者が行なっていた活動であり、施設入所に伴い、「能力はあるのにさせてもらえない活動」になっていた。 今後、対象者の選定を慎重に行ない、安全を十分に考慮した上で、在宅で行なっていた「能力があるのにさせてもらえない活動」や、栽培した植物の加工などを積極的に取り入れたプログラムを作成したいと考える。 また今年度、集団園芸療法時に一緒に参加してくれる家族がみられるようになった。介護老人保健施設は在宅復帰を目指した施設であるので、来年度は在宅復帰後の生活をより意識したプログラムにすると同時に、園芸療法の活動に関する新聞の発行を通し、家族と接点を持つことで意識を高め、指導していく中で、痴呆高齢者が在宅復帰後も、継続して園芸活動が行なえるようにすることが重要であると考える。
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