2003 Fiscal Year Annual Research Report
GIS支援による下肢不自由者の都市空間におけるアクセシビリティに関する分析
Project/Area Number |
14780042
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮澤 仁 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10312547)
|
Keywords | 下肢不自由者 / 都市 / 建造環境 / アクセス保障 / バリアフリー / 地理情報システム(GIS) |
Research Abstract |
本研究は、現代都市の建造環境が、下肢不自由者の活動機会へのアクセスをどの程度制限しているのかを、物理的障壁を考慮に入れた近接性の分析から定量的に把握することを目的としている。最終年度である平成15年度は、(1)多摩ニュータウンの早期開発地区を対象地域に、下肢不自由者の活動機会に対する近接性を地理情報システム(GIS)支援により計測し、(2)その結果に基づいて、現代都市の建造環境の特徴と下肢不自由者が経験するインアクセシビリティの問題との関連性を考察した。また、上記(2)の過程で必要となった資料・文献を入手するため、2003年12月ならびに2004年2月にそれらの収集を目的に国内出張をした。 本年度の成果として特筆すべき点は、下肢不自由者を行動主体に、その活動を制約する障壁と想定される物理的要素(建築物入口の段差・階段や道路の傾斜)を考慮に入れて計測した近接性の結果は、それらの障壁を考慮しない場合と比べて大幅に低く、最大で3倍の格差が観察されたことである。この結果は、下肢不自由者にとって研究対象地域に遍在する階段や段差、道路の傾斜が実際のところ克服しづらい障壁であるならば、活動機会への参加に大きな制限を受けることを意味している。また、そのようなインアクセシビリティは、多摩ニュータウンが健常者のために造られた都市空間であることを浮彫にするものと考えられる。そして、地域人口の高齢化に伴い健全な身体を前提とする建造環境とそこで日常を生活する人々の今日的現実との非対称性が潜在的に拡大しつつあることを念頭に入れれば、本研究の結果は、これから中・高年期を迎える対象地域の住民が後天的な障害を身体に負った場合、周囲の環境が障壁に転化し、活動機会への参加に大きな制限を受ける可能性が高いことを示唆するのである。 なお、本研究の成果の一部は、本年度末に刊行の学術雑誌において公表した。
|