2003 Fiscal Year Annual Research Report
狂牛病問題下における牛肉安全性保証の地域システムの確立に関する研究
Project/Area Number |
14780043
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松村 啓子 宇都宮大学, 教育学部, 助教授 (60291291)
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Keywords | BSE / トレーサビリティ / 地域システム / 食の安全 / 北海道 / 岩手県 / 生産情報公表JAS規格 |
Research Abstract |
平成15年度は、法制化がなされたばかりの牛肉のトレーサビリティ制度に焦点をあて、北海道十勝地方と岩手県を対象に、牛肉の生産・と畜・流通に関する地域システムが牛個体情報の伝達を介していかに再編されていくのかを明らかにすることを試みた。 牛の出生からと畜までの個体情報の管理を義務づける牛肉トレーサビリティ法の施行(平成15年12月)は、産地食肉センターを核とする個体識別番号の伝達システムの構築を促した。岩手県では平成14年2月から独自に「いわて牛TBCシステム」を立ち上げ、岩手県畜産流通センターで処理される3千頭分の牛の生産履歴情報を消費者に開示してきた。平成15年12月以降は同システムの対象を県外出荷牛を含む全県産牛3万7千頭に拡充することによって、20近くに及ぶ銘柄牛肉の多様な販売ルートは維持したまま、情報管理は生産地域の行政機関に一元化しようとしている。 一方、北海道清水町産の「十勝清水牛」のように、一農協と生協との取引契約にもとづき消費者に生産履歴情報が開示されている例もみられる。北海道においては肉牛生産が少数の大規模経営に集約されており牛個体情報の遡及が容易である点、産地での加工比率が高く部分肉出荷が一般的である点などから、既存の産直事業を軸にしたトレーサビリティが志向されている。 しかし平成16年12月以後に義務づけられる牛肉流通段階における牛個体情報の表示および記録・保存に関しては、具体的な実施方法がいまだ不透明である。また生産情報公表JAS規格の適用に対しては、生産段階での投薬情報の公表を前提とすることから、肉牛生産者のあいだでは消費者の誤認にもとづく産地の選別が助長されかねないことへの懸念が広がっている。
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