2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世都市の空間構造とその認識に関する歴史地理学的研究
Project/Area Number |
14780045
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山村 亜希 京都大学, 総合博物館, 助手 (50335212)
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Keywords | 中世都市 / 空間構造 / 空間認識 / 都市法 / 豊後国府(府内) / 小田原 / 惣構 / 都市像 |
Research Abstract |
本年度は、中世都市の空間構造の実態と領主権力・都市民の空間認識のあり方について研究を行った。具体的には、東国の代表的な中世都市である小田原に加えて、以前から資史料の収集を進めていた豊後国府(府内)を研究対象地とした。いずれの都市についても、(1)中世文書史料、(2)中世絵図、(3)考古学的データ、(4)近世地誌類・絵図類、(5)明治期の地籍図を収集し、検討を加えた。 豊後国府(府内)に関する(1)〜(5)の資料を総合的に検討した結果、中世を通じて豊後国府(府内)は、古代豊後国府の構造を踏襲した分散的・複合的な空間構造を呈していたことが明らかになった。その一方で、領主権力・大友氏の発給した都市法には、豊後国府の空間を統一的・求心的な構造としてみなす大友氏の認識が表現されていた。その他の都市の研究成果をふまえると、中世前期都市においては、現実の空間構造と領主権力の空間認識の乖離が一般的にみられると言える。さらに、その乖離は中世後期都市に至って徐々に解消されるとの見通しを得た。この研究成果は、人文地理54巻6号に論説として発表した。 また小田原に関しても同様に、(1)〜(5)の資料を総合的に検討しつつある。小田原には、戦国期に全国でも屈指の規模の惣構と呼ばれる都市囲郭装置が建設された。従来の研究では、惣構の軍事機能が強調されてきたが、本年度の検討の結果、惣構には経済機能が大きいことが推定された。さらに、惣構の選地には領主権力である後北条氏の空間認識が関与している可能性が指摘できる。現在、後北条氏の建設したその他の東国の城下町(韮山・八王子・玉縄・佐倉)と小田原とを比較しながら、空間構造の実態と惣構との関連について考察を進めている。これらの成果を総括して論文を執筆し、地理学関連学術雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)