2002 Fiscal Year Annual Research Report
加速器質量分析放射性炭素年代測定を利用した古文書・古筆切の年代判定法の開発
Project/Area Number |
14780091
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 寛貴 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 助手 (30293690)
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Keywords | 加速器質量分析法 / 放射線炭素年代 / 古筆切 / 古文書 |
Research Abstract |
本研究の目的は,加速器質量分析法による^<14>C年代測定が古文書・古筆切の年代判定法としてもつ有効性を示すところにある.そこで,本年度は書跡史学・古文書学などの立場から歴史学的な年代が明らかになっている古経典・古文書の^<14>C年代測定を行うとともに,年代未詳の古筆切・古文書の^<14>C年代測定に着手した. 木製文化財資料には,測定される^<14>C年代が歴史学的年代よりも古くなるという問題がある.これは,資料に心材部や伐採後乾燥させた木材が利用されることがあるために生じる現象である.和紙も楮・雁皮などの低潅木から生産される一種の木製文化財であるが,本研究により,歴史学的年代の既知である古文書・古経典の^<14>C年代測定の実績が充実され,和紙については^<14>C年代が歴史学的年代とよく一致し,^<14>C年代測定法が古文書・古筆切の有効な年代判定法となりうることが示された.この両年代の一致は,和紙の原料に,生えて1〜数年の枝が選択的に用いられること,また,長期の保管により和紙は劣化してしまうため,生産されてから文字が書かれ文書として歴史に登場するまでの時間が短いことによるものと考えられる. 一方,年代未詳の古筆切・古文書についての研究も開始した.古筆切の場合,何重にも裏打ちが施されていることがある.本研究において,鎌倉時代の古筆切の^<14>C年代を裏打ち紙ごと測定し1960年代以降という結果が得られた.この結果からも,裏打ち紙は後世になって張られたものと考えてよく,本紙の正確な年代を得るためには,裏打ち紙を完全に除去する必要があることが示された.また,飛雲紙に書かれた伝藤原行成筆古筆切の^<14>C年代から,平安時代特有の料紙であるといわれていた飛雲紙が,まさに平安時代のもの,しかも十世紀末と年代が上がり行成筆の可能性が強くなったことから,他の伝行成筆古筆切との比較研究の必要性が提示されるに至った.
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Research Products
(1 results)