2003 Fiscal Year Annual Research Report
実践に基づく美術教育における鑑賞教育の研究 ―環境芸術を題材に―
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14780135
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高須賀 昌志 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (30262249)
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Keywords | 鑑賞教育 / 環境芸術 / パブリック・アート / 総合学習 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、国内の環境芸術における歴史的・社会的観点から評価の定まった事例を抽出し、設置経緯、経過について現地取材、関係機関に取材することを含め多角的に調査を進め、歴史(発展過程)、産業、地域文化との関係が、設置事業経緯や事業主側にあることを確認し明らかにした。これは環境芸術がその地域ごとに密接に関わりを持つことの証左であり、鑑賞教育を題材として扱う際の手立てとして重要な意味を持つ。環境芸術には設置経緯やその作品が創出された背景に地域の歴史、特徴などとの密接な関係が、制作主体者、設置事業者、加えて受益者(市民)にそれぞれに存在し、それを鑑賞教育の題材として扱うことは今までとは異なる視点から鑑賞者と作品の関わりをつくることが可能となることを示すものである。これらのことをふまえ鑑賞プログラムの開発をおこなっているが、現場教官との協議を重ねる中で鑑賞行為に限った授業内容だけではなく、創作を含んだプログラムを開発する必要性を認識している。現在、来年度の実施する試行授業の準備を進めているが、このなかでも実技の内容を含むプログラムをあわせて計画している。 環境芸術をモニュメントや壁画などのいわゆる「美術」の概念のなかに限るのではなく、歴史的な意義を持つ建築物や「場所(地域)」を環境芸術としてとらえ、総合学習や他教科との連携を視野におきながら、広義の意味で「芸術」として美術の範疇に取り入れていくことで鑑賞教育の大きな展開していく可能性がある。例えば、社会科(日本史)との連携における『戦争の記憶』としての関連記念碑等。『社会発展の記録』としての文化施設、工業施設など、地域それぞれに存在する人類の歩みの痕跡を「人間の生み出したもの」=「芸術」としてとらえ、鑑賞の対象にしていくことの意義を明らかにしていき、次年度には具体的なプログラムの提示をおこないたい。
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