Research Abstract |
今年度は,次年度以降の研究の基礎資料を得るために,アメリカ合衆国ハワイ州の公立小学校および私立学校において授業観察を行った。具体的には,学校はKailua Elementary School, Punahou School, Waialua Elementary School, 教科名はSocial Studies, Language Arts, Fine Arts, Hawaiian Studiesである。 研究上特に注目すべき授業実践としては,Kailua Elementary SchoolのLanguage Artsの授業における,同時多発テロと真珠湾攻撃,アラブ系アメリカ人への敵視と日系人の強制収容,を関連づけて,民族的偏見の問題をクローズアップさせた学習内容が一つ,もう一つは,Punahou SchoolのSocial Studiesの授業における,「南北戦争後の南部の再建」(合衆国史の重要単元)をテーマとして取り上げて,歴史把握,時代考察,国家観などについての認識をを深めようと試みたもの,が挙げられる。これらについては,研究課題名にある,「公正さ」の教授・学習過程の観点から,授業資料,児童らのノート記録,授業の観察記録などを手がかりに,次年度以降分析を行うこととする。 また,今年度の研究から,総合的な学習に対する示唆も得られた。Punahou Schoolは私立学校であり,柔軟なカリキュラムが設定されている。大教科として人文科(Humanities)が設けられ,そこに社会科(Social studies), Language Arts,芸術(Fine Arts)の3教科が包含される形式がとられている。授業実践においては,学習内容によってその都度これら3教科のいずれを中心教科とするかは変わるが,3教科が有機的に連関した形で学習が組み立てられる。観察した授業においては,三教科の境界が児童らには知覚できないほど,統合されてスムーズな流れがそこにはあった。これらのことを,論文において検討し報告した。
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