2003 Fiscal Year Annual Research Report
社会科における「公正さ」の教授・学習過程に関する実証的比較研究
Project/Area Number |
14780136
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
川崎 誠司 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (10282782)
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Keywords | 社会科 / 多文化 / 公正 / 公共心 / 異文化 / エスノグラフィ / 授業分析 / ハワイ |
Research Abstract |
本研究は,将来的に多文化化が一層進展すると考えられる日本を念頭に置き,そうした社会において強く求められる公共心をどのように育成すべきかという課題について,その論理を実証的に明らかにしようとするものである。具体的な手がかりとして,アメリカ合衆国ハワイ州の小学校で行われた授業の記録の分析を通して,そこに現れた教師の願いや主体性を描写することとした。分析の基準は,拙稿(1997)「アメリカの多文化教育におけるイクイティ論の展開」『東京学芸大学紀要 第3部門 社会科学』第48集pp.273-281において明らかにしたequityの概念を援用した。 いわゆる「メルティング・ポット論」と「サラダ・ボウル」論の異同について検討し,ハワイにおいてはアメリカ本土とは異なり両者が共存することを論じた。すなわち,ハワイにやってきた多くの民族はハワイ独特の「ローカル」文化を形成し共有しながら,同時に各民族が祖先から受け継いでいる固有の文化を維持してもいる,ということである。こうした多民族が共存する社会は,いかなる教育によつて形成されているのかということが,本研究の課題となった。 実践の観察は,ハワイ州の小学校において中心教科とされているLanguage Artsを対象として行い,社会科の視点,とくにエクイティの要素に照らしながら分析した。 公立のK小学校では,ハワイ州のカリキュラム・スタンダードに従ってK小学校のためのアクション・プランが作られ,それに則って授業が行われている。一方,P小学校は私立学校であるため,州教育局の指導・制約の下にはない。そうした相異なる二校のLanguage Artsの授業において,多面的考察の重視という共通の特性が見いだされたことは,一般化はできないが,ハワイの小学校における人間形成,すなわち公共心育成の論理の一つであると考えられる。本研究では,紙幅の都合で授業実践を限定的に取り上げ分析した結果,上記のような論理が観察されたが,今後より一層事例を集積して一般化を試みる必要がある。
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Research Products
(1 results)