2003 Fiscal Year Annual Research Report
核融合材料に対するパルスイオンビームを用いた軽元素表面分析法の開発
Project/Area Number |
14780391
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮丸 広幸 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80243187)
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Keywords | RBS / 核融合 / 表面分析 / パルスイオン / TOF |
Research Abstract |
ラザフォード後方散乱分析法に対してナノ秒のパルス幅を持つイオンビームを応用した飛行時間型の散乱イオン分析法(TOF-RBS)を開発するにあたり、これまで数keVから数百keVのエネルギーを持つ比較的低エネルギーのイオンを計測するのに高速応答をするMCP(マイクロチャンネルプレート)を用いてきた。しかしながら、低エネルギーのイオンをプローブビームとして用いた本研究では散乱イオンの収量が極端に大きくなる。これが分析感度の向上につながるわけだが、対象方向に散乱されるすべてエネルギーのイオンをMCPが受け止めることになる。このため実際の実験では計測の頻度が増すにつれ、MCPの性能低下や放電による絶縁破壊等が顕著に観測された。検出器の感度特性の変化は分析感度に大きな影響と変動を与えるために改善することが必要である事が分かった。このためプラスチックシンチレーターと光ファイバーをらびに光電子増倍管を組み合わせた検出系も今回新たに採用し、低エネルギーイオンに対する検出特性を調べその有効性を吟味した。プラスチックシンチレーターを用いた実験では数百keVの散乱イオンに対しては良好な応答を示したが、数keV程度のイオンに対する発光効率が低いために低エネルギー部においてイオン検出のカットオフが生じてしまうことが分かった。これについては使用しているシンチレーター物質の再検討が必要であり、現在検討中である。またベリリウム、リチウム、炭素等の軽元素についてそのRBSスペクトルを現在開発中のシステムで測定を行った。これらを試料に用いた場合においては十分な分析感度と1keV程度のエネルギー分解能が得られることが明らかになった。しかしながら、ビームスリットの縁部から発生するビームの広がりによって試料外で(試料ホルダーや真空チェンバー等)散乱されたと思われるイオンについても測定されることが明らかになった。これは対象とする試料の散乱断面積が小さいのに対して周辺のステンレス等の散乱断面積が大きく、たとえ試料外に広がったビーム強度がビーム中心部に対して5〜6桁小さくともその影響がスペクトル上に現れるためである。これまでの実験結果を踏まえ、低エネルギーのイオンをプローブビームとして用いるRBSではそのシステムの構築、設計段階で試料の支持やビームのコリメーター、ビームダンプなどの幾何学的配置や材料の選定などを注意深く行う必要があることが分かつた。現在、システムを再検討中であり、実験にて判明した試料外からの散乱事象や、プローブビームのわずかな広がりの影響を極力排除できるよう、更なる改良を今後行っていく。
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