2003 Fiscal Year Annual Research Report
微小大気浮遊粒子中の変異原性ニトロ芳香族化合物の環境動態
Project/Area Number |
14780409
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲津 晃司 東京工業大学, フロンティア創造共同研究センター, 助手 (70272698)
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Keywords | 微小大気浮遊粒子 / 変異原性物質 / ニトロ芳香族化合物 / 環境動態 |
Research Abstract |
大気浮遊粒子中の変異(ガン)原性有機化合物は,米国で規制が始まったPM2.5のような微小粒子に存在し,その健康影響評価に必要な大気環境動態の解明は国際的にも社会的ニーズが高いが,微小粒子中の変異原物質の環境動態に関する知見はほとんどない。本研究では微小大気浮遊粒子からの変異原性ニトロ化芳香族の検出と定量,および大気中生成や寿命等の動態に関する基礎的な知見を得ることを目的とし,大気浮遊粒子の捕集,可溶性有機画分のクロマトグラフィー・質量分析による同定,定量を大気変異原に寄与するニトロ化物について検討した。アーティファクトがないよう短時間で多量の試料が採取でき,かつ気相成分との分別が確実に行えるハイボリュームエアサンプラーを用いて典型的な東京都心部および南大阪郊外のサンプリングサイトで各時期に大気浮遊粒子をフィルターやポリウレタンフォーム上に捕集し,抽出・分画ののち化学発光検出HPLCにより新規物質を同定・定量した。 全抽出物およびニトロ芳香族化合物等の変異原性試験の結果と化学分析による定量値,さらにはNOやオキシダントといったガス状汚染物質の観測値を併せて検証したところ,大気の間接変異原性には多環芳香族炭化水素が主たる寄与をもち,その濃度変動が自動車排出のマーカーとなるNOのものと極めて良く相関することがわかった。直接変異原性にもディーゼル車等の自動車から排出されるニトロ芳香族化合物の寄与率が高かったが,日中にはOHラジカルやNO2等の光化学生成が活発となった場合には大気中で生成するニトロ芳香族化合物も有意に寄与することが明らかとなった。さらには三宅島の噴煙由来の二酸化硫黄が多量に東京都心に飛来,移流したときに直接変異原性が高くなることが観測され,これまでの実験室内研究で示唆されていたニトロ芳香族化合物の大気中生成への二酸化硫黄の促進効果を示唆する初めての観測結果が得られた。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Takayuki Kameda, Koji Inazu, Hiroshi Bandow, Satoshi Sanukida, Yasuaki Maeda: "Diurnal Change of Direct-Acting Mutagenicity of Soluble Organic Fraction of Airborne Particles Collected at Southern Osaka : Correlation between the Mutagenicity, Particles-associated Nitroarenes, and Gaseous Emission"Atmospheric Environment. 38(印刷中). (2004)