2002 Fiscal Year Annual Research Report
貧栄養海域の漂泳区物質循環に与えるピコプランクトンの影響
Project/Area Number |
14780415
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小針 統 鹿児島大学, 水産学部, 助手 (60336328)
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Keywords | 亜熱帯外洋域 / ピコプランクトン / 食物網 / 生物海洋学 / バイオマス / 物質循環 |
Research Abstract |
(1)バクテリア・シアノバクテリア増殖速度・被食速度測定 数回の予備実験から、硝酸塩添加では表層から採集したシアノバクテリアの増殖が悪く、アンモニア塩を添加する必要性が示唆された。添加する栄養塩を改良して希釈培養した結果、バクテリアとシアノバクテリアは同程度の増殖速度を示したが(0.25d^<-1>,0.28d^<-1>)、バクテリアの被食速度はシアノバクテリアよりも高く(0.20d^<-1>,0.11d^<-1>)、バクテリアの方がより捕食されていたことを示した。 (2)ピコ〜マイクロプランクトン(生産者)の現存量算出 水温躍層が発達する6月〜10月にバクテリアは1.42〜1.77mgC/m^3、シアノバクテリアは0.15〜0.23mgC/m^3のバイオマスを有した。ピコプランクトン群集が卓越し高いバイオマスを維持したが、ナノ〜マイクロプランクトン群集はバイオマス全体の変動に影響を与えた。バクテリアはこのバイオマス全体の50〜75%に相当することから、粒状有機物を生み出す生物群として捉えれば、亜熱帯海域において大きなエネルギーを供給していることが示唆された。 (3)ナノ〜マイクロプランクトン(消費者)現存量算出 ナノ〜マイクロプランクトン群集のバイオマスは0.12〜0.18mgC/m^3であり、バクテリアを含む生産者バイオマスの変動パターンと類似した。従属栄養ナノ鞭毛藻はこのバイオマスの50%以上を占め、消費者の中で卓越する生物群であることが分かった。 まとめ 亜熱帯外洋域ではバクテリア・シアノバクテリアが卓越しており、これらの生物群から供給されたエネルギーの多くは従属栄養ナノ鞭毛藻を経由すると考えられた。すなわち、亜熱帯外洋域の漂泳区食物網はピコプランクトンに依存した微生物食物網が卓越していることが示唆された。
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