2002 Fiscal Year Annual Research Report
底生生物模擬消化管液抽出法による底質毒性評価手法の開発と雨天時排水受水域での適用
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14780422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 典之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (30292890)
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Keywords | bioavailability / PAH / 多環芳香族炭化水素 / 底生生物模擬消化管液 / 底質毒性 / 雨天時排水 / SDS / 底泥 |
Research Abstract |
研究の初年度にあたり,手法の確立を主たる作業とした。本年度の研究のための試料として,干潮時の荒川感潮域の泥と市販されているカナダ港湾底泥を用いた。荒川での採泥時には,今後の実験のためにゴカイも採取した。これらの大量の試料からのPAH(多環芳香族炭化水素)抽出作業をより効率よく行うために,備品として購入した試験管エバポレーターを用いた。 ◎試料の保存と抽出特性 これまでの経験から,一つの底泥からの抽出・回収濃縮作業にはほぼ3日を要し,かつ並行作業が難しいことから,底泥試料の保存が非常に重要なポイントとなる。そこで採泥当日,5日後,30日後に抽出作業を行い,その保存状態(冷凍・冷蔵)と抽出率との関係を見た。採泥当日に抽出されたPAHの総量(EPAで指定されている16種類)と比較して,5日の時点で冷蔵した試料では大幅に抽出率が低下したのに対し,冷凍した試料からの抽出率は5日後も同程度であった。しかし,PAH総量では同程度であったものの,個々のPAHで見ると抽出率に大きな変動があるものが見られた。30日後にはどちらの保存状態でも明らかに抽出率が低下した。この結果から実験室での保存により,抽出率,すなわちbioavailabilityが容易に変化してしまうことが示された。今後は5日より短い期間の保存の可否の確認と,共存する有機成分の組成変動の調査が必要である。 ◎試料による抽出特性の違い 荒川底泥とカナダ港湾底泥,さらには研究代表者が2001年に行ったデンマークの池沼底泥での結果を比較すると,PAHのSDS1%溶液による抽出率は一定ではなく,それぞれの底泥で異なる結果となった。この理由を解明するためには,今後底泥中の有機成分の組成を知ることが重要となる。
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