2003 Fiscal Year Annual Research Report
cDNAマイクロアレイによる新規ヒ素発癌関連遺伝子の同定
Project/Area Number |
14780433
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
崔 星 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究領域, 研究員 (20342735)
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Keywords | 砒素 / 遺伝子活性化 / 癌 / 化学形態 / DNA methylation / p16 / E-cadherin / PTEN |
Research Abstract |
中国における砒素汚染は、石炭燃焼による経気道暴露や飲料水による経口暴露の2種類がある。無機砒素(iAs)暴露による生体内As代謝変化を実験的に解明することを目的に、動物ラットに砒素経口飲料水或経静脈暴露を行い、ラットの胆汁及び尿中に排泄されるヒ素化合物の化学形態パターンの違いを逆相カラムやイオンカラムを用いて、HPLC-ICP-MS法で解析した。ラット経口砒素暴露の場合、胆汁からはモノメチルAs^<III>-グルタチオン抱合体(MADG)とジメチルAs^V (DMA^V)、尿中には主にDMA^Vが確認された。それに対し、経静脈砒素暴露群では、主にMADGが胆汁から排泄され、尿からは主にiAs^V、iAs^<III>及びDMA^Vが排泄された。MADGを経口投与した場合、腸肝循環を経て胆汁からDMA^Vが検出された。しかしDMA^Vを静注した場合、胆汁からの排泄は極めて少なかった。ジメチルAs^<III>-グルタチオン抱合体(DMAG)は胆汁やバッファー中では非常に不安定であることから、経口iAs暴露によって、ラット肝臓ではMADGがDMAGに代謝され、DMA^Vとして検出されたと推測される。このDMAG毒性は極めて高く、慢性砒素暴露による発癌と深く関与するものと考えられる。 またわれわれは、低濃度砒素暴露は癌関連遺伝子に影響し、抗癌作用を発揮することを突き止めた。ヒト肝癌細胞株HepG2において、低濃度iAs^<III>(2μM)処理ではp16、PTEN、E-cadherinの脱メチル化が誘導され、遺伝子発現が増加し、高濃度(10μM)処理では遺伝子発現が低下した。低濃度iAs^<III>(2μM)と0.5μM 5-Aza-CdRとの複合処理はPTEN及びE-cadherin遺伝子CpGアイランド脱メチル化を促進し、これら遺伝子の発現を更に増強させた。以上より、iAs^<III>は高メチル化された癌抑制遺伝子プロモータ領域に影響し、脱メチル化によって遺伝子を再発現させた。これは、砒素による酸化的ストレスやアポトーシス誘導とは別途に存在する新たな抗癌作用のメカニズムとして考えられる。低濃度砒素は、発現抑制された癌抑制遺伝子の発現を回復させることにより癌治療に利用できる可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Shraim A, Cui X, … Hirano S.: "Arsenic speciation in the urine and hair of individuals exposed to airborne arsenic through coal-burning in Guizhou, PR China"Toxicology Letter. 137. 35-48 (2003)
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[Publications] Cui X, Li S, … Hirano S.: "Subchronic exposure to arsenic through drinking water alters expression of cancer-related genes in rat liver"Toxicologic Pathology. 32. 64-72 (2004)