2002 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル高原における遊牧民の過放牧と草原の砂漠化問題に関する計量経済研究
Project/Area Number |
14780453
|
Research Institution | Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries |
Principal Investigator |
鬼木 俊次 農林水産省, 農林水産政策研究所, 主任研究官 (60289345)
|
Keywords | モンゴル / 内モンゴル / 遊牧 / 牧畜 / 砂漠化 / 過放牧 / 市場経済化 / 計量経済 |
Research Abstract |
中国北部からモンゴル国にわたるモンゴル高原の牧畜地域において市場経済システム導入後に発生している過放牧による草原の退化の経済的な要因を明らかにするため、牧畜農家の生産費調査を行い、過放牧の要因分析を行った。現地調査は中国北部(内蒙古自治区四子王旗・蘇尼特左旗)およびモンゴル国(トゥブ県・ヘンティ県)で行い、合計340戸の家計調査を行った。まず、両国で22戸の牧民から詳細な聞き取り調査を行い、問題点の整理を行った。その後、両国で収集した大規模生産費調査のデータを用いて、地域ごとの所得の比較、中国の牧畜農家の放牧圧の要因分析・牧畜生産関数分析、牧民の投資費用の推定を行った。その結果、以下の事柄を明らかにした。 (1)中国内蒙古では都市に近い地域において所得が高くなるが、モンゴル国では市場に近い地域で所得が低くなる。草地の使用権が個別に確定されていないモンゴル国では、都市周辺で過放牧が深刻化していることがうかがえる。 (2)一戸当たりの草地規模が大きく、あるいは教育レベルが低いほど放牧圧が低い。すなわち、大規模化によって過放牧が緩和される可能性がある。 (3)モンゴル国では都市部に近くなるにつれて生産性が低くなるが、中国では必ずしもそのような証拠はない。中国内蒙古自治区阿巴嗄旗および東烏珠穆沁旗の大規模牧畜農家のデータを用いた分析により、都市部に近いほど生産性が高くなる。 (4)モンゴル国では井戸投資が非常に低い。モンゴル国では土地は共有であるため、自ら井戸への新規投資を行うインセンティブが低くなるためであると考えられる。 以上のことから土地の所有システムが過放牧による草地の荒廃に深く影響していること、市場経済化の影響で過放牧が悪化していること、規模拡大が過放牧防止に有効であることが明らかになった。
|