Research Abstract |
ATP依存性プロテアーゼLonは,細胞分裂阻害タンパク質であるSulAを分解する際に,構造的・機能的に重要な部位を優先的に分解することが,本研究者の従来の研究より明らかとなっている.このことは,基質機能の迅速かつ徹底的な抑制に貢献する新規の分子機構であると考えられる.一方Lonは,ポリリン酸存在下で,SulAを分解せず,リボソーム蛋白質S2を分解することが知られている,そこで本研究では,このポリリン酸存在下におけるS2の分解機構を詳細に検討し,SulAの場合と比較検討した,その結果Lonはポリリン酸存在下で,S2を3-17残基程度のペプチドにプロセッシブ分解すること,P1部位には,Phe等のかさ高い疎水性残基が主にみられること,主な切断部位は,分子表面よりむしろ分子内部に偏在すること等が明らかとなった.これらの特徴は,SulAの分解の場合と共通している.一方Lonは,ポリリン酸非存在下では8量体相当の分子量をもつが,ポリリン酸存在下では,4量体相当の分子量となることが,ゲル濾過クロマトグラフィーを用いた解析から示された。従ってLonは,ポリリン酸存在下で会合状態が変化し,認識する基質も変化すること,しかし,基質の分解様式自体には大きな変化がないことが示された。また,ポリリン酸はアミノ酸飢餓状態で蓄積することから,LonによるS2の分解は,細胞内で枯渇したアミノ酸の補給に寄与すると考えられるが,Lonでは,ペプチドレベルまでしか分解されないことから,さらに別のプロテアーゼが,アミノ酸への分解を担当していることが示唆された.
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