2002 Fiscal Year Annual Research Report
第三の酸化還元補酵素を利用する新規酵素の同定と機能解析
Project/Area Number |
14780499
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
笠原 和起 理化学研究所, 精神疾患動態研究チー^ム, 研究員 (50344031)
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Keywords | ピロロキノリンキノン / 酸化還元補酵素 / ビタミン / リジン代謝 / アミノアジピン酸セミアルデヒド |
Research Abstract |
ピロロキノリンキノン(PQQ)は、ニコチンアミド(NAD, NADH)およびフラビン(FAD, FMN)に次ぐ第三の酸化還元補酵素としてバクテリアにおいて見つかったが、その後、多くの食物にPQQが含まれていることが判明した。また、PQQを含まない餌を与えたマウスは発達不良をはじめとする多くの異常を示したことから、PQQは哺乳類にとってビタミンのひとつではないかと考えられていたが、生体内の役割については謎に包まれていた。我々は、PQQ依存的なバクテリアの脱水素酵素の間でよく保存されている配列(PQQ結合モチーフ)を持ったタンパク質をコードする新規遺伝子を哺乳類から見出した。我々がマウスから単離した遺伝子は、1,100アミノ酸残基のタンパク質をコードしていた。ノザンブロット解析を行ったところ、この遺伝子は全身の組織において発現しているが、とくに心臓および肝臓において強い発現が見られた。PQQ結合モチーフ以外の配列の相同性から、リジン代謝経路の一酵素であるアミノアジピン酸セミアルデヒド脱水素酵素(AASDH)をコードしているであろうと推測された。そこで、リジンを多量に含む食餌をマウスに与えたところ、リジン代謝に関わる他の遺伝子とともに、心臓・肝臓においてその新規遺伝子の発現も増強され、リジン代謝に関わっていることが示唆された。この新規酵素の生化学的な特性を調べるため、タンパク質を発現させることを試みた。当初は大腸菌を用いて可溶性を高めるための種々の検討を行ったが(GSTやMBPとの融合タンパク質としての発現、温度、IPTG濃度、分子シャペロンの共発現など)、可溶化させることはできなかった。そこで、バキュロウイルス-昆虫細胞系を用いて発現させたところ、可溶性タンパク質として精製できることがわかった。
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