2002 Fiscal Year Annual Research Report
光合成酸素発生反応機構の解明:マンガンクラスターによる水分解反応の直接検出
Project/Area Number |
14780518
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木村 行宏 理化学研究所, 光生物研究チーム, フロンティア研究員 (20321755)
|
Keywords | FTIR / 光化学系II / マンガンクラスター / 水分解反応 / S-stateサイクル / 部位特異的変位 / 同位体置換 / カルシウム |
Research Abstract |
1.低波数領域測定システムの構築及び最適化 冷却窒素ガスフロー型クライオスタットを製作し、精度、安定性の高い温度制御システム、高感度検出器(1000〜700cm^<-1>:MCT検出器、650〜350cm^<-1>:Siボロメーター)、及び各領域に最適なフィルター(Ge、CdTe)を組み合わせることにより、1000〜350cm^<-1>の領域で10^<-5>オーダーの吸光度差を検出可能なフーリエ変換赤外(FTIR)分光システムを構築した。 2.マンガン(Mn)クラスター骨格振動の直接検出 650〜350cm^<-1>に関して、光化学系IIのMnクラスター骨格振動、及びMnクラスターの振動モードを測定する際に障害となるMn以外の金属成分(鉄)の酸化還元に由来するバンドの検出に成功した(投稿準備段階)。現在、^<15>N置換試料を用いて、窒素(ポリペプチドやアミノ酸配位子)に由来するバンドの帰属や、H_2^<18>Oを用いて、Mnと水の振動の同定を行っている。また、酸素発生に必須であるカルシウムの除去及び2価金属カチオン置換の実験から、カルシウムはMnクラスターの光酸化に伴う構造変形に影響を及ぼさないが、イオン半径の大きい金属イオンやカドミウムの置換により、クラスターモードが摂動を受けることを直接的に証明した(投稿準備段階)。 3.S-stateサイクルの測定 1000〜700cm^<-1>に関しては、測定条件(温度、湿度、閃光照射間隔)を最適化し、光合成水分解反応の本質であるS-stateサイクルの各遷移(S_1→S_2、S_2→S_3、S_3→S_0、S_0→S_1)について観測可能な計測システムを構築した。各遷移において、800〜900cm^<-1>にMnの酸化に由来するバンドが観測された。この領域にはMnと水の相互作用に由来するバンドが出現する可能性もあるため、現在、同位体置換試料や部位特異的変異株を用いてバンドの帰属を行っている。
|