2002 Fiscal Year Annual Research Report
マウス胎生期における造血発生システムの分化制御機構の解明
Project/Area Number |
14780525
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
信久 幾夫 熊本大学, 発生医学研究センター, 助手 (40332879)
|
Keywords | 造血 / 血球分化 / AGM / アダプター蛋白質 / Lnk |
Research Abstract |
マウス胎生期での成体型造血は、パラ大動脈臓側中胚葉(p-Sp)/大動脈-生殖原基-中腎(AGM)領域を場として、血管内皮様の細胞集団を起源とすると考えられている。SCFの受容体c-Kitのキナーゼドメインに結合するアダプター蛋白質として知られるLnkの遺伝子を欠損したマウス成体に於いては、B前駆細胞や造血前駆細胞の増加が報告されている。本研究では胎生期AGM造血におけるLnk蛋白質の機能を解析した。まずLnkはAGM造血期では大動脈内皮細胞に発現を認めた。そこで、血管内皮様の細胞から血球分化を再現する1つの系であるマウス胎仔のAGM領域の分散培養にGFPと共にLnkをレトロウイルスベクターで導入すると、対照GFFのみの導入と比べ、Lnkを導入したものは輩出してくる血球様細胞中の幼若な血球のマーカーCD45を発現する浮遊細胞の減少が起きた。また、この血球分化阻害効果にはLnkのSH2ドメインが必須であることが解った。AGM培養にLnkを導入して得た浮遊細胞についてコロニーアッセイを行うと、Lnk非導入時に通常多数出現するべきコロニーが全くみられなかった。さらに、Lnk遺伝子ホモ欠損胎仔のAGM分散培養では、同腹仔のヘテロ接合体AGMと比べて、胎仔あたり約3倍のCD45陽性細胞の輩出が確認された。また、AGMを直接造血コロニーアッセイを行うと、同腹仔のヘテロ接合体と比べてホモ接合体では、約2倍のコロニーの形成が確認された。これらの結果から、Lnkがマウス胎生期のAGM造血を負に制御する分子であることが示唆された。マウス胎生初期の造血の場すなわち卵黄嚢に高発現する新規遺伝子ELYSについては、キメラマウスを作製し、ヘテロ接合体を選択した。これらを掛け合わせると、ホモ遺伝子欠損マウス胎仔は見られず、胎生致死で在ると思われる。現在それらの原因などについて解析中である。
|
-
[Publications] Kimura N: "Identification of a novel transcription factor, ELYS, expressed predominantly in mouse fetal hematopoietic tissues"Genes to Cells. 7・4. 435-446 (2002)
-
[Publications] Takizawa M: "Requirement of gp130 signaling for the AGM hematopoiesis"Experimental Hematology. (in press). (2003)