2003 Fiscal Year Annual Research Report
棘シナプス内アクチン細胞骨格の活動依存的調節機構の解析
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14780610
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
深澤 有吾 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (60343745)
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Keywords | アクチン細胞骨格 / アクチン細胞骨格 / シナプス後蛋白質複合体 / 海馬 / シナプス |
Research Abstract |
脳の重要な機能の一つである記憶は、神経活動依存的に棘シナプスの伝達効率を変化させ(可塑的変化)、神経細胞が構築するネットワーク中を流れる信号経路が変わることで形成される。棘シナプスは、細胞骨格の内アクチン細胞骨格のみを含有するので、アクチン細胞骨格の変化がシナプス膜上の機能分子の機能調節に関与していると考えられる。私は、記憶現象の細胞レベルのモデル系である長期増強現象(LTP)を無麻酔無拘束下のラット歯状回で誘導すると、伝達効率の上昇に伴い入力を受けた棘シナプスでアクチン重合が促進し、この変化が可塑的変化の持続時間に重要である可能性を見出した。そこで、可塑的変化をしたシナプス内の分子動態をシナプスの形態変化と共に詳細に解析したいと考えた。そこで、実験計画に示した以下の項目について検討し、論文にまとめた。1)In vivo LTP実験系を所属研究室に導入する為、機器を購入し実験系を確立した。2)活動依存的アクチン重合がNMDA型グルタミン酸シグナルにより調節され、3)この下流に、アクチン脱重合因子として知られるコフィリンのリン酸化調節系が関与していることを明らかにした。これらの事より、棘シナプス内アクチン細胞骨格調節系がシナプス伝達の可塑的変化の持続時間の調節に重要な役割を持つことを明らかにした。 本年度は、5)シナプス膜上分子の局在変化とアクチン細胞骨格系の変化との関連性を検討する目的で、シナプス膜上に存在する分子の高感度定量的局在観察法の確立を重点的に行い、シナプス膜上のAMAP型グルタミン酸受容体をほぼ100%の感度で電子顕微鏡レベルで観察できる解析系を確立した。これを用いて海馬神経細胞のAMPA受容体の局在解析を行った結果、LTP誘導に伴ってシナプス膜上AMPA受容体の密度増加が起こること見出した。これは現在までに考えられてきた伝達効率の増強メカニズムに、AMAP受容体の密度調節を付加する新たな知見であり、アクチン調節系阻害時の密度変化と合わせて検討し発表する予定である。この他、LTP誘導時のサブユニット依存的な局在変化やシナプス外AMPA受容体の樹状突起上の位置による密度変化等、新しい結果を得ている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Fukazawa, Y.Saitoh, F.Ozawa, Y.Ohta, K.Mizuno, K.Inokuchi: "Hippocampal LTP is accompanied by enhanced actin content within the dendritic spine that is essential for late LTP maintenance in vivo"Neuron. 38. 447-460 (2003)
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[Publications] A.Kato, Y.Fukazawa, F.Ozawa, K.Inokuchi, H.Sugiyama: "Activation of ERK cascade promotes accumulation of Vesl-1S/Homer-1a immunoreactivity at synapses"Brain Res Mol Brain Res.. 118. 33-44 (2003)