2002 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュを用いた嗅覚神経回路形成の分子メカニズムの解析
Project/Area Number |
14780615
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70332335)
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Keywords | 嗅上皮 / 嗅球 / 軸索 / 投射 / におい / 受容体 / トランスジェニック / GFP |
Research Abstract |
嗅覚神経回路の形成過程を詳細に解析するために、嗅神経軸索を可視化したトランスジェニックゼブラフィッシュの作製を行った。脊椎動物で嗅細胞特異的に発現することが知られているolfactory marker protein (OMP)のゼブラフィッシュorthologを同定し、OMPプロモーターの制御下に膜移行型yellow fluorescent protein (YFP-mem)を発現するトランスジェニック系統を樹立した。リポーターの発現を解析したところ、受精後24時間でolfactory placode内の、樹状突起を持たないパイオニアニューロンで発現が観察された。30時間前後からolfactory pitへ樹状突起を伸ばした感覚神経細胞(嗅細胞)での発現が観察され、その数は発達に伴って増加した。嗅神経軸索は脳内に侵入する前に一端集束し、侵入後に嗅球全体に分散して糸球体様の構造を形成した。受精後3日目までには、複数の糸球体構造がはっきりと観察された。以上のように、得られたトランスジェニック系統は、嗅神経軸索の嗅球への投射過程を生きたまま詳細に観察することができ、嗅神経回路形成の分子メカニズムを解析する上で有用であることが示された。 また、特定の匂い分子受容体を発現する嗅細胞の投射パターンを解析するために、匂い分子受容体遺伝子クラスターを含む約100kbのBAC(bacterial artificial chromosome)クローンを単離し、大腸菌を用いた相同組み換え法により特定の匂い受容体をリポーター遺伝子に置換した。得られたBACトランスジーンを受精卵にマイクロインジェクションしたところ、一部の嗅細胞でリポーター遺伝子が発現し、それらの軸索は特定の糸球体サブセットに投射した。現在、BACトランスジーンをゲノムに組み込んだトランスジェニック系統の樹立を行っている。
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