2004 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュを用いた嗅覚神経回路形成の分子メカニズムの解析
Project/Area Number |
14780615
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮坂 信彦 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70332335)
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Keywords | Robo / Slit / 軸索ガイダンス / 嗅上皮 / 嗅球 / トランスジェニック / 変異体 / GFP |
Research Abstract |
前年度までに樹立したトランスジェニックゼブラフィッシュ(嗅細胞軸索をGFP誘導体で可視化したもの)を軸索ガイダンスリセプターであるRobo2の機能欠損変異体(astray)と交配し、軸索の伸長過程を詳細に解析することで、嗅細胞軸索の糸球特異的投射の分子機構について以下の知見を得た。 1.Robo2は発生初期の嗅上皮に一過的に発現し、その機能欠損変異体astrayでは初期の嗅細胞軸索が本来の経路からそれて嗅球以外の脳の領域に侵入する。 2.Robo2のリガンドである軸索反発性因子Slitはゼブラフィッシュでは4種類存在し、それぞれ異なる発現パターンを示すが、それらはすべて嗅細胞軸索の伸長経路を取り囲むように局在している。 3.内在性のSlit濃度勾配を打ち消すために、ヒートショックプロモーター用いてSlit2を体全体で強制発現させると、嗅細胞軸索はastray変異体と類似の投射異常を示す。すなわち、発生初期の嗅細胞軸索が本来の経路からそれて嗅球に正しく到達することができずに脳の他の領域に侵入する。 4.astray変異体の稚魚では、嗅細胞軸索が投射する嗅球内の糸球前駆体の形成が不全である。 5.嗅細胞は神経細胞の中でも例外的に生涯を通じて新生するにもかかわらず、astray変異体の発生初期の投射異常はその後の成熟過程で修復されず、成魚でも嗅上皮と嗅球を結ぶ神経配線様式に異常が認められる。 これらの知見は、Robo-Slitシグナルが発生初期の嗅細胞軸索を正しく嗅球へと導くために必須であることを示すと共に、「発生初期の神経接続が、正しい神経ネットワーク構築のための"足場"となる」という概念を支持するものである。
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Research Products
(1 results)