2014 Fiscal Year Annual Research Report
バルク鉄カルコゲナイド超伝導体における臨界温度と臨界電流密度の増強
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14F04025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
為ケ井 強 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30183073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUN Yue 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Fe(Te,Se) / 過剰鉄 / 磁気光学イメージング / 粒子線照射効果 / 不純物置換 |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年に発見された鉄系超伝導体のなかで、Fe(Te,Se)は、ユニークな物質系である。この物質は、砒素等に比べ毒性の低いカルコゲンを含み、Fe(Te,Se)層のみからなる超伝導体である。しかし、Fe(Te,Se)では、Te/Se層内の過剰鉄が超伝導を強く抑制するため、その除去法の開発およびその後に実現する純良な超伝導状態の評価が求められてきた。我々は酸素アニールによりFe(Te,Se)単結晶中の過剰鉄が除去され、超伝導特性が劇的に改善することを報告した。また、過剰鉄除去の効果は酸素のみならず、他のカルコゲン雰囲気下でも見られることも明らかにしている。このようにして過剰鉄を除去したFeTe1-xSexでは、臨界電流密度が低温で5x105 A/cm2に達し、その分布は均一であり、異方性も小さいことを示してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、先行研究の知見を元に、FeTe1-xSex単結晶の0<x<0.4の試料に対しても酸素アニールを行い、超 伝導及び反強磁性状態がどのような変更を受けるかを詳細に調べた。その結果、バルク超伝導を示す領域がこれまで考えられていたよりずっと広くx=0.05付近まで広がることを明らかにした。 また、過剰鉄の除去効果がニクトゲン雰囲気下でも見られ、特性も他の手法と同程度に改善されることを示した。 さらに、ブルックヘブン国立研究所から提供されたFeTe1-xSex (x=0.5)に対する磁気光学イメージングによる局所磁気特性の評価を含む広範な測定を行い、この薄膜がマクロにも均一で臨界電流密度も大きい超伝導体であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の申請段階では対象試料とし鉄系超伝導体のうちFe(Te,Se)系のみに限定して研究そ行う予定であった。しかし、この1年ほどの間に純良なFeSe単結晶が作製され、フェルミエネルギーが非常に小さく、超伝導がBEC-BCSクロスオーバー領域で発生しているとの理解が広がっている。また、磁場下で超伝導体状態内に相転移が存在すること報告されている。そこで、2年目はFe(Te,Se)に加え、FeSe単結晶における磁束状態及び磁束ピン止め機構の解明も行う。このとき、Feサイトへの他の遷移金属の置換も行い、物性および超伝導対称性変化を見る。 また、Fe(Te,Se)単結晶においては、粒子線照射の顕著な効果が方向されていないので、核種、エネルギー、照射量等を変化させた照射を試み、臨界電流の増大や超伝導転移温度の抑制が見られるかを精査する。 さらに、様々なアニールにより大きな輸送電流を流すことのできるFe(Te,Se) 超伝導線材の作製にも着手する予定である。
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Research Products
(5 results)