2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14F04038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊東 忍 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30184659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PARIA Sayantan 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 銅 / 活性酸素 / 酸化反応 / 触媒 / 金属酵素モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
銅錯体による分子状酸素の活性化は、生体反応の機能解明のみならず、効率的で環境適応型の触媒開発に繋がるものとして注目を集めている。これまでは主に、二核や多核の銅錯体を用いた活性酸素錯体の構造、物性、反応性、および触媒化学への応用について検討がおこなわれてきたが、単核の銅―活性酸素錯体に関する研究例は少なかった。そこで本研究では、新規な単核銅―活性酸素錯体の創成と機能解明および触媒反応への応用をめざして研究を行った。トリス(2-アミノエチル)アミン(tren)系四座配位子の窒素置換基として、複数のイソプロ基が結合した嵩高いterphenyl基を導入した新規な3脚型4座配位子を設計・合成した。続いて、得られた配位子を用いて対応する銅(I)錯体を調製し、結晶構造、各種分光学的特性を明らかにした。次に、銅(I)錯体と分子状酸素との反応を行い、紫外可視吸収スペクトル、ESI-MS、EPRスペクトル、ラマンスペクトルなどを駆使して、生成する単核銅活性酸素錯体の構造や分光学的特性、および磁気的特性を明らかにした。その結果、単核の銅(II)スーパーオキソ錯体と銅(III)パーオキソ錯体の生成が確認された。一方、上記の銅(I)錯体とアルキルヒドロペルオキシドを反応させると、これまでには全く報告例のない、配位子のアニリンラジカルと銅(II)-アルキルペルオキソからなる新規な活性酸素錯体の生成が明らかになった。生成過程の反応機構や得られた活性酸素-有機ラジカル錯体の反応性についても系統的に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年間と言う短期間で、新規に合成した銅(I)錯体とアルキルヒドロペルオキシドとの反応から、当初予想していなかった全く新しい活性酸素-有機ラジカル錯体が生成することを見いだし、単核銅活性酸素錯体の化学に大きなブレークスルーをもたらした。なお、この成果は既に論文としてまとめ、J. Am. Chem. Soc.に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見いだした全く新しい活性酸素-有機ラジカル錯体の詳細な構造、分光学的・磁気的特性、反応性、生成機構などについて検討するとともに、他の酸化剤との反応や銅以外の金属(ニッケル、コバルト、鉄など)についても同様に検討し、新しい遷移金属活性酸素錯体の合成にチャレンジする。さらに、得られた錯体を触媒とする効率的な酸化反応系の構築をめざす。これにより、さらに3報の論文を作成する予定である。
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Research Products
(8 results)