2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナノポアシーケンサーにおける一塩基分解能を達成する塩基読み取り分子に関する研究
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14F04039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 和彦 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (70237303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VERMA Rajiv 大阪大学, 産業科学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ナノポア / 分子認識 / 素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAの一分子シークエンス技術として有望な「ナノポアシーケンシング」は、ナノサイズの細孔をDNA鎖が通過する際の微細な電流応答が、核酸塩基によりわずかに異なるという原理を利用する。しかし、ナノポア構造に埋め込まれた電極と細孔を通過する核酸塩基との距離、相対配置の違い等により、検出出来る電流応答の強度は著しく変化することが示されている。さらに、全てのシーケンサーにとって困難な問題であるが、同じ塩基が連続する配列の読み取り精度を十分に高くする必要がある。本研究では、ナノポアを通過する際の核酸塩基の細孔に対する相対配置の制御に加えて、通過する塩基を短時間ではあるが細孔内に補足することにより、より高感度の電流応答を実現することを目指して、ナノポア内部に核酸塩基認識分子を固定化することを提案、検討した。 現在まで、ナノポア内部に固定化するためのチオール基を有する核酸塩基、特にグアニンを認識する分子の合成を進めてきた。NCTP-1と呼ぶ分子を設計し、既に合成を完了した。また、NCTP-1を固定化した金電極を作成し、金電極上での鉄3価イオンの4価への酸化、もしくはその逆の還元反応が、媒質中に添加したグアニル酸、グアノシンなどにより抑制させることを明らかにした。また、この電極表面での酸化還元反応の抑制効果は、添加する塩基がグアニンの時に顕著に認められ、他の核酸塩基、アデニン、シトシン、チミンでは効果が小さいことが示された。これらのことから、媒質中のグアニンが電極表面のNCTP-1に結合することにより、鉄イオンが電極表面に接近することが難しくなり、電極反応が抑制されることが明らかとなった。原理上はNCTP-1をナノポア内部の表面に固定化することにより、通過するグアニン塩基を短時間補足することが可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したナノポア内部表面に固定化可能な、核酸塩基を識別する低分子NCTP-1の合成を完了し、その化学的特性も詳細に解析した。さらに、電極表面にNCTP-1を固定化して、電極表面での酸化還元反応が塩基特異的に抑制されることを確認している。 これらの点から、本提案は概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノポア内部表面に固定化する分子NCTP-1の合成とその物性についての解析、さらには、電極表面でのグアニン塩基特異的な電極反応の抑制効果結果を得ている。 一方、ナノポアへの固定化については、ナノポアの準備が困難であることが判明した。研究計画段階では共同研究者を募りナノポアの供給を受ける予定であったが、ナノポアシーケンサーの国際的競争が激化したため、我々が期待した金電極表面を持つナノポアの入手が困難な状況にある。 このため、研究計画をナノポアシーケンサーへの応用を現時点では中断し、それに代わり本研究で開発したNCTP-1相当の化合物を金表面上に固定化した表面プラズモン共鳴法によるDNAセンサーへの展開を目指す。 表面プラズモン共鳴センサーについては、研究室独自で装置、センサーを準備出来るため、今回合成した化合物等の固定化による研究展開は十分に期待出来る。
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Research Products
(3 results)