2014 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス成熟過程を制御するC1qファミリー分子の新規機能
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14F04066
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柚崎 通介 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40365226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BUDISANTOSO Timotheus 慶應義塾大学, 医学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | synapse / formation / hippocampus / mouse / C1q / mossy / fiber / epilepsy |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプスの形態および機能を制御する分子機構の解明は、脳機能の発達・成熟過程および記憶・学習の形成機構を理解する上できわめて重要な課題である。近年、自然免疫系を支える補体C1qやその機能ドメインを有するCbln1などの「C1qファミリー分子」が脳内に豊富に存在することが発見され、シナプス形態や機能を制御することがわかってきた。本研究計画ではC1qファミリーに属する新しい分子群であるC1q-like分子(C1qL1-4)に着目した。当初は聴覚系回路の要衝を担う脳幹カリックスオブヘルドシナプスに高発現するC1qL1のシナプス機能解析を目指した。しかし、研究室内で同時に進行していた研究から、海馬における記憶形成に必須である歯状回顆粒細胞(苔状線維)とCA3錐体細胞間のシナプスにおいて、C1qL2やC1qL3分子が非常に興味深い発現パターンを示すことが分かった。そのため、C1qL1の研究をいったん中断し、今年度は海馬におけるC1qL2/3分子のシナプス機能解析を中心に研究を進めた。 まずC1qL2/3欠損マウス海馬の免疫組織染色によって、苔状線維―CA3錐体細胞シナプスにおいてシナプス関連分子の局在解析を行った。その結果、グルタミン酸受容体の局在パターンが有意に変化していることを見いだした。この結果は電気生理学的実験によっても確認された。さらに、ピロカルピンを用いた側頭葉てんかんモデルにおいて、C1qL2/3欠損マウスではてんかん波が発生しにくくなっていることを見いだした。これらの結果は現在論文として投稿準備中である。 一方、記憶・学習の基礎過程であるシナプス可塑性は、AMPA受容体の輸送によって制御されることが分かっている。この過程においてAMPA受容体の副サブユニットであるTARPのリン酸化が必須であることを共同研究として示した(Nat Commun, 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を修正し、C1qL1ではなく、C1qL2/3分子の機能解析を中心に進めたが、この研究の成果は現在論文として投稿準備中であることから、「当初の計画以上に進展」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
もともとは医学部出身であり、「もう少し臨床場面に近いtranslationalな研究を行いたい」という本人の強い希望から製薬会社への就職が決まることとなった。このため本研究計画への本人の関与は現時点では終了となった。
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