2014 Fiscal Year Annual Research Report
有鉤条虫の比較ゲノム解析に基づく組織指向性の解明および遊離型DNA検査法の開発
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14F04103
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
迫 康仁 旭川医科大学, 医学部, 教授 (40312459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NKOUAWA Agathe 旭川医科大学, 医学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 有鉤条虫 / ゲノム解析 / DNA検出法 / マルチプレックスLAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
有鉤嚢虫症は、ラテンアメリカでは脳内寄生のみによるものが大多数であるのに対し、アジアでは、脳内と他組織(主に皮下、筋肉)への寄生によるものが通常である。このような病態の差違を生じさせる組織指向性に関して、なぜアメリカ分離株とアジア分離株間で異なっているかの明確な解答は得られていない。そこで、ゲノムの塩基配列を株間で比較することにより、組織指向性を規定する因子の探索を試みた。同時に、テニア条虫を鑑別検出する高感度かつ簡便な検査法の開発を試みた。 1)有鉤条虫アジア分離株およびアフリカ分離株のゲノムの全塩基配列の決定 解析予定であったアフリカで分離した有鉤条虫は、それより抽出したゲノムDNAが必要量に満たなかったため、解析できなかった。そこで、研究室で保存していたアジア(タイおよびインドネシア)で分離した有鉤条虫よりゲノムDNAを抽出し、次世代シーケンサを用いたゲノム解析を実施した。その結果、タイ分離株では約12G、インドネシア分離株では約10Gの塩基配列データが得られた。現在、公開されている有鉤条虫メキシコ分離株の配列データとの比較解析を行っている。 2)寄生虫遊離型DNAの高感度な検出法の確立 申請者らは、LAMP法を用いたテニア条虫(有鉤条虫、無鉤条虫、アジア条虫)の鑑別検査法を開発し報告した。しかし、本法の短所は1度の検査で3つの反応系が必要なことである。そこで、より検査を簡便化するために1つの反応系であるマルチプレックスLAMP(mLAMP)法を構築した。構築したmLAMPは特異性が高くかつ従来のLAMP法と同等の感度を有していた。また、使用するプライマーをFITC、DIG、TAMRA、Biotinで標識することにより、dotELISAアッセイを用いた簡便なLAMP増幅産物の検出法も開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカ分離株から十分量のゲノムDNAが調整できなかったが、他の分離株(タイおよびインドネシア)から抽出したゲノムDNAを用いることにより、ゲノム比較解析を遂行するための塩基配列データを取得することが出来た。 また、テニア条虫を鑑別検出できるLAMP法の欠点であった1度の検査で3つの反応チューブが必要である点を改善できるマルチプレックスLAMP法を開発することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在取得した塩基配列データを、公開されている有鉤条虫メキシコ分離株の配列データと比較する。公開されている配列データは、完全長のゲノム塩基配列情報ではないため、ゲノム全体を比較することが困難な可能性がある。その場合は、ある特定の遺伝子を中心としたゲノム構造の解析を実施する。 同時に、今回開発したmLAPM法の評価研究を行う。また、感染ブタ血清中に有鉤条虫由来の遊離型DNAが存在するか否かを確認し、それを検出する検査法を開発する。遊離型DNA検出が困難な場合、免疫学的検査法の開発を行う。さらに、血清中遊離型DNA検出法の血管外寄生虫検出への応用モデルとして、エキノコックス感染ネズミの血清を用いた寄生虫DNA検出を試みる。
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Research Products
(1 results)