2014 Fiscal Year Annual Research Report
電場誘起電子状態スイッチングを示す異種金属配位高分子
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14F04337
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60176865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WEI Rong-Jia 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 電荷移動共役スピン転移 / 双安定性 / 水素結合 / 磁性 / 誘電性 / シアン化物イオン架橋 / コバルト / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
多重応答性相転移を示す化合物の物性研究として、これまでにシアン化物イオン架橋混合原子価Fe-Co錯体における電子移動に伴うスピン転移(Electron-Transfer-Induced Spin Transition = ETCST)が見出され、光誘起単分子磁石や光・熱による磁性・電気伝導性変換を示す物質が開発されてきた。本研究では、分子のキラリティーに着目した分子設計によって、様々な外場に応答しうる多重機能性分子性化合物の創製を目的として研究を行った。キラル構造をもつ2次元および3次元混合原子価金属錯体では、結晶の電気双極子の配列に依存して、強誘電体となる可能性があり、電子移動共役スピン転移と連動することで、電場誘起相転移を示す化合物が開発できると考えられる。 平成26年度の研究において、新規キラル4座配位子を設計・合成し、高次構造を持つシアン化物イオン架橋混合原子価Fe-Co集積型錯体を構築し、外場に対する多重応答性について調べることを計画した。 水素結合可能な置換基を有する各種アルデヒドを原料とし2,2'-Diamino-1,1-binaphthylと反応させることで新規キラル4座配位子を合成した。さらにコバルトイオンと反応させることでキラルな新規コバルト単核錯体を構築素子としたシアン化物イオン架橋Fe-Co集積型錯体の合成を試みた。これらの合成過程の中で、かご状骨格を持つFe4Co5錯体が得られた。このかご状錯体は水分子を内包しており、水素結合によって2種類の安定位置に存在していることが分かった。誘電測定の結果、水分子の運動に起因する誘電緩和現象が観測された。また、磁化率測定の結果、330K以上の温度領域で鉄-コバルトイオン間の電子移動に伴うスピン転移現象が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究をもとに水素結合部位を導入した新規4座配位子の合成に成功しており、当初予定していた計画通り研究を進めることができたため、おおむね順調に進展していると評価した。また、錯体合成の条件検討の過程の中で、電子移動を伴うスピン転移と特異な誘電緩和を示す新しいかご状多核錯体の合成に成功しており、電場応答可能な物質系の開発に有用な知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に合成した新規キラル4座配位子をもちいて錯形成反応を検討し、電場誘起相転移をしめすシアン化物イオン架橋鉄-コバルト集積型錯体の構築を試みる。X線構造解析・磁化率測定・誘電率測定を行い、双安定性についての知見を得、分子設計の最適化を行う。また、水分子を内包したかご状錯体に関しても、電場印加状態での磁化率測定等を行い、電場と磁性が相関した双安定性が発現するかどうか調べる。
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Research Products
(1 results)