2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14F04345
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
君塚 信夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90186304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ASTHANA DEEPAK 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 光学特性 / フォトン・アップコンバージョン / 水中 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脂質分子との種々の機能性材料とを自己組織化することにより、新規な機能性光学材料を創出することを目的としている。本年度は、様々な機能性材料との複合化を検討する中で、通常ならすぐに不活性化してしまう光励起種を水中で効果的に安定化することを見出した。脂質分子を蛍光性色素と複合化してその色素の励起三重項状態を増感したところ、水中で非常に長寿命化できることを発見した。通常、水中で励起三重項状態はすぐに失活してしまうため、そのような不安定活性種を水中で容易に取り扱うことができる新しい方法論を開拓したといえる。この研究成果を3月に行われた日本化学会第96春季年会(2016)で発表し、近日中に論文投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グルタミン酸骨格を有するカチオン性の合成脂質とアニオン性のジフェニルアントラセンスルホン酸塩を水中で混合することにより、イオン性相互作用と疎水性相互作用によりそれらが複合化された自己組織化体を得た。蛍光顕微鏡観察、透過型電子顕微鏡、走査型示差熱分析により、脂質分子と色素分子がナノレベルで複合化されていることを確認した。このナノ複合体に三重項増感剤である白金(II)オクタエチルポルフィリンを加えて緑色レーザーで励起したところ、青色のアップコンバージョン発光が観測された。このアップコンバージョン発光の寿命が5ms以上と、水中での寿命としては非常に長いことが分かった。すなわち、脂質分子とのナノ複合化により水から色素を遮断し、励起三重項状態を安定化できることが明らかとなった。 以上のことから 当研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質分子と発光分子を有機合成的に共有結合で繋げた分子を合成し、また三重項増感剤にも同様に脂質分子を修飾する。これにより増感体と発光体をより接近させて増感効率を改善し、アップコンバージョン効率を更に向上させることを目指す。さらに、より低励起光強度でのアップコンバージョンを発現するため、発光分子を高分子骨格中に規則的に配列させた構造を形成し、励起三重項の非常に高速な拡散を達成することを試みる。
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